カルテは見せられへんけど、見てもらったら一発で分かります。量さえあればいいってもんじゃないけど、看護師だけで毎日1ページくらい、軽く書いていますよ」

すべての医師が善人であることに
期待する「出来高制」の欠陥

 谷口が大切にしていることは「どんな患者も診る」ことと、もうひとつが「検査や薬は最小限。受診も最小限に」ということだ。なぜクリニックの収入減になることを心がけるのだろう。

「患者さんが貴重な時間とお金を受診に費やすのはもったいないやないですか。薬だって飲まないことに越したことないから。可能な限り減薬もします」

 減薬は採血して体調が悪化していないか確認しながら徐々に進める。「生活習慣病の薬も可能ならやめていくようにしています。実際やめた人もいる」という。診療で算定するのは、検査や注射を包括する6100円~7600円の「生活習慣病管理料(1)」ではなく、実施のつど加算する3330円の(2)の方だ。

「算定はそれなりの指導をした場合に限っているので、算定しないことも多々あります。指導もせずに医学管理料を取ったら、それは詐欺ですよ。(1)は点数がやたら高くて現実的ではないので、取ったことはありません。多くの患者さんに言うてるけど、ここには年に1回、インフルエンザのワクチンだけ打ちに来るのが理想。きれいごとやなくて、それがわれわれの喜びです」

 谷口は、日本医療の特徴である出来高制について「ご飯を食べに行って、頼んでないものをいっぱい出されて、それを全部請求されるようなもんですよ」とたとえる。

「医者が受診患者を利用して収入を増やしたいと思えば、それができる。『この検査は必要です。せえへんかったら怖いことになります』と言われたら、患者さんは普通しますよね。やっぱり患者と医者は医療知識で差があるので、対等にはなれないんです。だから医師は善人じゃないとできない。それが大前提なんですよ。検査を増やして、薬を増やして、受診回数を増やして利益を得るのは論外です。それやったら、もうこれは出来高制が悪いんであって、包括制にするタイミングに来てるんじゃないかと思いますけどね」

 谷口は力を込めてそう言った。