“嘘”をつかないために
住所まで変える
――『ユニクロ潜入一年』では、潜入先のユニクロでアルバイトの面接受けることになるわけですが、年齢などで怪しまれなかったのですか?
横田:1店舗目の面接では、「年齢としてはかなり上ですが、20代や30代の人の指示も聞けますか」って聞かれたので、まっすぐ目を見て「はい、問題ありません!」って答えました。
そこで何カ月か働いて、次の店舗に行って最後に新宿のビックロに行くんだけども、2店舗目はやっぱり面接も緩くなるんですよ。「前に働いていたのね」、みたいな感じで。
――辞めた理由は探られないんですか。
横田:住所を変えていたこともあって問題ありませんでした。新宿のビックロで働くのに千葉の住所から通っていたらおかしいでしょう。途中にいくつも店舗があるのにビックロだけ狙い撃ちだと「どうした?」みたいな感じだから。
――アルバイトの同僚から前職について聞かれたときは、どのように答えていたんですか。
横田:「ネットで注文がきて、ネットで注文を返す仕事です」って言っていました(笑)。メールで原稿のやりとりをしているので嘘じゃないです。
甚野:聞いてる人も、分かったような分からないような(笑)。
妻と離婚して
“苗字”を変える
横田:だから、なんとなくIT関係だと思われていたんじゃないかな。履歴書には書けるところまでは明確に書いて、あとは「自由業」としていました。
でも、面接の時は突っ込まれなかったです。それと、名前でバレないように妻と離婚して苗字も変えています。
甚野:奥さんと離婚して名前を変える、住民票を移して住所を変える、それで潜入するというのがすごいですよね。
横田:始めからペンネームで書いていれば一番いいんですけどね。名前を変えるのはちょっとハードルが高いです。
結婚は1日でできるんですけど、離婚届はすぐ受理してくれなかった。夫婦で離婚届を出しに行ったとしても、2、3週間ぐらいかかるんじゃないかな。でも、苗字を変えたるために離婚する人なんて少ないから、そんなこと気付いてる人はあまりいないんだけれども。
住所は1日で変えられますね。沖縄の県知事選にボランティアとして潜入するのに住所が千葉市だったらおかしいでしょう。だから、あらかじめ那覇市に住民票を移していました。結局、名前でバレてしまいましたが(笑)。
1973年生まれ。大学卒業後、大手電機メーカーや出版社などを経て2006年から『週刊文春』記者に。2017年の「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。近著に『実録ルポ 介護の裏』(文藝春秋)、『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)、『衝撃ルポ 介護大崩壊』(宝島社)がある。
1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。99年よりフリーランスとして活躍。主な著書に、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』、『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』、『仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵政vsアマゾン』、『ユニクロ潜入一年』『潜入取材、全手法』など。『潜入ルポamazon帝国』(小学館)では、新潮ドキュメント賞、 編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞の作品賞を受賞。最新刊『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)では、「山本美香記念国際ジャーナリスト賞」を受賞。









