「人間理解」と「他者理解」は違う

――「人間理解」と「他者理解」にはどういう違いがありますか?

鈴木:単なる言葉の問題かもしれないけど、「人間理解」が「人間とはこういうものだ」と思うことだとすると、「他者理解」は「○○さんってこういう人だ」って思うこと。広く人間を理解した上で、「でも○○さんってこういうふうに考えるんだな」「こういうこと言われるとちょっと弱いんだな」みたいなのとかっていうのを理解していくのが重要。

 リーダーシップそのものは「人間理解」の一つだと思うんですよね。「こういうことをすると人はこうなりますよ」とか、統計的に検証されることになるから、“一般的には”多くの人はこういうことをするとこうなる、みたいなことがある。

 ですが、人間っていうのは必ずイレギュラーな人がいるわけですね。目の前の人がレギュラーの人かどうかっていうのは分からないから、人間理解に合わせて他者理解も必要です。

 ただ、どこかで「きっとこうかな」みたいなことを想像してアプローチしていかなければいけない場面はあって。この時はやはり「他者理解」の問題になるんだと思うんです。

――「他者理解」にも絶対の法則はないと思いますか。

本間:HOWはあるかもしれないけど、「これをやれば絶対理解できる」っていうようなものはないでしょうね。

鈴木:逆に、これをしても全然理解できないよってことはいっぱいありますよね。たとえば、「一方的に自分の話をする1on1」とか。「自分はこう思ってるんだよ」ってことを話し続けても、おそらく他者を理解することにならない。

「なぜこの人はそういうふうにするのかな」とか、そういうことを観察しながら自分が思っているものとの差異を見つけていくことだと思います。とはいえ、その人を完全には理解はできないね。子どもとか奥さんとかでも理解できないもん。

本間これは「理解できる」という立場にとってマネジメントを行うのか、「理解できない」という立場に立って行うのか、スタンスの問題ですよね。

鈴木私は後者だと思っています。だけど、それを諦めるかどうかの問題。

本間:そうですね、自分のことだって理解できているか怪しいですから。

(本稿は、鈴木竜太教授の新刊『リーダーシップの科学』の発売を記念した特別対談です)

鈴木竜太(すずき・りゅうた)
神戸大学大学院経営学研究科教授。1971年生まれ。1994年神戸大学経営学部卒業。ノースカロライナ大学客員研究員、静岡県立大学経営情報学部専任講師を経て、現職。専門分野は経営組織論、組織行動論、経営管理論。主な著書に『組織と個人』(白桃書房:経営行動科学学会優秀研究賞)、『自律する組織人』(生産性出版)、『関わりあう職場のマネジメント』(有斐閣)、『(はじめての経営学)経営組織論』(東洋経済新報社)。共著に『組織行動』(有斐閣)。共編著に『お仕事マンガの経営学』(有斐閣)などがある。

本間浩輔(ほんま・こうすけ)
・パーソル総合研究所取締役会長
・朝日新聞社取締役(社外)
・環太平洋大学教授 ほか
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。2000年スポーツナビの創業に参画。同社がヤフーに傘下入りしたあと、人事担当執行役員、取締役常務執行役員(コーポレート管掌)、Zホールディングス執行役員、Zホールディングスシニアアドバイザーを経て、2024年4月に独立。企業の人材育成や1on1の導入指導に携わる。立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コース客員教授、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル代表理事。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。著書に『増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(ダイヤモンド社)、『1on1ミーティング 「対話の質」が組織の強さを決める』(吉澤幸太氏との共著、ダイヤモンド社)、『会社の中はジレンマだらけ 現場マネジャー「決断」のトレーニング』(中原淳・立教大学教授との共著、光文社新書)、『残業の9割はいらない ヤフーが実践する幸せな働き方』(光文社新書)がある。