人間の知性は総合的には「60代がピーク」、処理速度や記憶力は衰えるが…【豪州の研究より】Photo:PIXTA

 年末年始のにぎやかな雰囲気とは裏腹に、いつの頃からか、年齢を重ねることが憂鬱に感じられるようになった。

 一般に流動性知能――新しい情報を獲得し、素早く物事を処理する機能は20代前半にピークに達し、後は低下の一途をたどるとされる。一方、結晶性知能、すなわち経験や学習で獲得する語彙や理解力、洞察力、創造力、また近年注目されるようになった自他の感情的な反応に適切に反応する感情知能、いわゆるEQは、それ以降も緩やかに上昇すると考えられている。

 つまり、流動性知能の低下を結晶性知能と感情知能が補い、中高年期以降に認知機能とEQを包括した総合的な「人格者」としてのピークを迎える可能性があるわけだ。

 オーストラリアの研究者チームは、従来の16の認知・心理的指標を使い複数の認知・心理調査研究データから、年齢と認知・人格機能指数(CPFI)との関連をメタ解析した。

 その結果、やはり流動性知能は20代前半にピークを迎えた後、処理速度や記憶力が低下した。一方で語彙や知識は60代まで増加した後、横ばい状態になることが判明。

 パーソナリティー特性を評価する情緒安定性、誠実性、外向性、協調性、開放性をみると、外向性は20代をピークに下がり続けるが、情緒安定性は逆に75歳前後まで一貫して上昇。開放性は55歳ごろから緩やかに低下したものの、協調性は60歳ごろまで比較的安定している傾向が認められた。またEQは40代半ばにピークに達した後、高齢期にかけて徐々に下がるようだ。

 そのほか、ビジネス上の成功に不可欠の金融リテラシーと公正さに関わる「道徳問題に対する推論」は成人期を通じて一貫して上昇し、60代~70代前半にピークに達することが示された。

 最終的に流動性知能を加味した包括的なCPFIをみると、ヒトの総合的な認知・人格機能は18~35歳ごろは比較的急激に上昇し、その後、上昇スピードは緩やかになるものの60歳ごろでピークに達することがわかった。

 それ以降はCPFIも低下するが、少なくとも70代の自分は、流動性知能頼みの20代の自分より賢い。低下する機能を経験知とEQでうまく補いながら、豊かな人生を歩んでいこう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)