名優・伊東四朗が70歳を過ぎて「百人一首」の暗記を始めた「切実な理由」Photo:SANKEI

「最近、物忘れが増えた」「もう歳だから仕方ない」そんなふうに感じていないだろうか。しかし、精神科医・和田秀樹氏によれば、“記憶力の低下”は老化ではなく“意欲の低下”が原因だという。忘れるサイクルは20代も70代も変わらない。衰えるのは「覚えよう」とする心のエネルギーなのだ。科学的根拠と実例をもとに、“老けない・ボケない脳”を保つための鍵を探る。※本稿は、精神科医の和田秀樹『70歳からの老けないボケない記憶術』(ワン・パブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

忘れるサイクルは
20代も70代も同じ

「70代ともなると、若い頃に比べて記憶力はかなり落ちる」

 多くの人がそう思っているのではないでしょうか。

 じつは、そう思うのは誤解、というか誤認識です。

 ドイツの心理学者にヘルマン・エビングハウス(1850~1909年)という人がいます。記憶に関する実験的研究の先駆者として知られる人物ですが、彼の実験によると、人は無意味な言葉を丸暗記した後、1時間後にはだいたい50%を忘れ、24時間後には約70%、1カ月経った段階では、ほとんど記憶に残っていないという結果になったそうです。要するに時間が経てば経つほど人は忘れてしまうということです。

 中期記憶(長期記憶)に対する時間の経過と記憶の関係を表した曲線を「エビングハウスの忘却曲線」といいますが、ここで注目したいのはこの忘却曲線には年齢は関係していないということです。つまり、「年とともに忘れっぽくなる」のではなく、忘れっぽくなるサイクルは20代も70代も同じなのです。

 とはいえ、「年をとるほど記憶力が落ちている」と実感している人も少なくないでしょう。

 じつはエビングハウスは、効率よく記憶するために、あることをする大事さも説いています。それが何だかわかりますか。

 復習することの重要性です。