脳は60歳までは衰えない!老後に認知機能「格差」をもたらす3つの習慣写真はイメージです Photo:PIXTA

脳の老化の進行に個人差をもたらしているものは何でしょうか?二つの著名な調査研究から、ひも解いてみましょう。性別や遺伝的な影響を除き、ライフスタイル上で三つの要因が大きく影響しているそうです。(トライズ代表 三木雄信)

人間の脳は「60歳までは」衰えない!

 筆者は英語スクールを運営しているのですが、60歳を超えてから英語学習を始めたのにもかかわらず、驚くほど伸びる人をたくさん見てきました。英語で自己紹介すらおぼつかなかったのに、1年後には英語でジョークを言えるレベルにまで上達した人が、何人も思い浮かびます。

 例えば、某メーカーを60歳で定年退職後、嘱託として同社で勤務を続けていたAさん。英語は文法も忘れてしまい全くの初心者だったのですが、65歳の完全引退後を見据えて一念発起し、英語で話せるようになりたいと来校されました。そして見事、1年ちょっとで、日本に来た外国人旅行者のガイド(ボランティア)をするのに十分な英語力を身に付けました。

 Aさんだけではありません。定年後、ハワイに長期滞在することを夢見て夫婦で受講し始めたYさん夫婦や、趣味はゴルフで座学は苦手というKさんも、1年程度で驚くほど英語力が上達しました。

 実は、脳の機能は、60歳くらいまではそれほど衰えないことが科学的にも明らかになっています。米ワシントン大学で脳機能に関する調査を行ったK・ワーナー・シャイエらによる「シアトル縦断研究」※1という有名な調査研究では、25歳から60歳にかけて、ある一つの能力を除き総合的には「人間の脳機能はほぼ衰えない」と結論付けています。むしろ、肝心なのは60歳以降で、人によって認知機能に格差が表れることを指摘しました。

 では、脳の老化の進行に個人差をもたらしているものは何でしょうか? また別の有名な調査で、「べチュラ研究」というものがあります。この研究結果によると、性別や遺伝的な影響を除き、ライフスタイル上で三つの要因が大きく影響しているそうです。