
「元気に長生き」を実現するためには認知症予防が欠かせない。要介護になる大きな原因として、認知症が挙げられるからだ。そこで今回、認知機能を維持するために効果的な食品をジャーナリストの笹井恵里子さんが取材した。大規模調査から判明したお薦めの3品とは――。(ジャーナリスト 笹井恵里子)
認知症リスクを低下させる
とっておきの食品の1つ目は「カレー」
認知症の予防として運動や手を使う、嗅覚を刺激するなどの方策もあるが、「食事」に関してはどうだろうか。
「効く」といわれる食品は、いくつかある。その中でも今回は大規模調査によって認知症発症のリスクを低下させることが判明した、“認知症になりにくい「とっておきの食品」”を取り上げよう。
まずは「カレー」だ。
以前から、カレーに使われるスパイスのうち、ウコンに多く含まれる成分「クルクミン」が認知症予防に期待されてきた。カレーをよく食べるインドでは認知症を発症する高齢者が少ないともいわれている。
軽度認知障害、認知症の
発症リスクが約80%低下する
そのような中、今夏に新たな研究が発表された。アンチエイジングに詳しい管理栄養士の望月理恵子氏が解説する。
「Nutrients誌(国際栄養学誌)2025年7月30日号に、カレーを毎日摂取する群では、認知症のグレーゾーンであるMCI(軽度認知障害)、認知症の発症リスクが約80%低下するという研究報告が掲載されました(※1)。シンガポールの地域住民を対象とした断続的コホート研究です」
「コホート研究とは、ある要因や特性を『持った群』と『持たない群』に分けて比較する研究で、この場合はカレーを毎日摂取する群、摂取しない群、まれに摂取する群など五つに分けて間欠的(途切れ途切れ)に追跡調査しています。そしてクルクミンを豊富に含むカレーの摂取頻度が高いほど、認知機能低下のリスク、軽度認知障害、認知症の発症率が低下することが明らかになったのです」
そしてカレーを食べるなら、一日の始まりの「朝食」や、活動時間帯の「昼食」に取り入れるのがいい。
「スパイスは体を温め、昼にかけて体温が上昇する手助けになります。また朝は脂肪の分解に関わる『肝臓』が、正午から14時には消化する『胃』が最も働く時間帯なので、カレーのように油分があってカロリーが高いものでも太りにくく、むしろ夕方にかけてのエネルギー源となるのです」(望月氏)
人は夜にかけて代謝が低下するため、夕食に高カロリー食を摂取すると肥満の要因にもなってしまう。また交感神経を活性化させるスパイスは、リラックスタイムである「夕食」に向かない。