
「私だってずっと言いたかった。母上って」
「知っていましたよ。あなたは私の期待に応えようと歯を食いしばって、仕方なく」
真実を明かした三之丞にタエは穏やかに語りかける。
松野家も雨清水家も嘘に嘘を重ねてきた。でもそれは相手を思いやってのこと。
さらにもうひとつの真実が明かされる。これがそもそもの嘘のはじまりだ。それはタエがトキの実の母親であることだ。
「雨清水も松野もみんな家族なのです」とフミはやさしさに包んでヘブンに説明する。タエはトキのもうひとりの母親なのだと。
こんな話をしているとき、部屋に飾ったこけし人形などが映る。これは怪談「子捨ての話」のときも映っていた。こけしは子どもの健やかな成長を願う人形だ。持ち主の幸運を願うブードゥー人形と共通するものがある。
ヘブンは日本語がよくわからないはずだが、こんなにも複雑な家庭事情は情報量が多すぎて理解できるのだろうか。錦織だって通訳(いろいろ補足説明しないといけないだろうから)が追いつかないであろう。
だがヘブンは一気に理解した。自身が早くに母親と別れ、その母が「大好きママ」だったから、母と子の関わりは理解できるようだ。
ふたりも母親のいるトキと結婚したことで母親がふたりになって「うれしいです」と、ヘブンは「おフミママさん」「おタエママさん」とさっそく親しげに呼ぶ。
「私たちのことも大好きになってね」とフミ。
いいぞ、いいぞ、感動話になってきた。
ところが、「ダメ」と言い出すトキ。「ずるいです」と話を混ぜっ返す。
「私だってずっと言いたかった。母上って」
このときのフミの少し複雑な顔と、タエのほほ笑みの対比に注目したい。
ヘブンがタエを「お母さん」と呼ばせようとするが「ムリムリ」と拒むトキ。フミに気を遣っているのだろう。
「ならママさんはどう?」とフミが提案し、トキは嗚咽(おえつ)しながら「ママさん」と呼んだ。
このときの泣き方がまるで子どものようで、幼い頃、本当の母に甘えたかったときに戻ったように見える。
ふう。これで大団円、と思ったら、三之丞がふらっと倒れる。
「なんだか気が抜けてしまって」
そんな三之丞に今度は司之介(岡部たかし)が手を差し伸べた。
「だらくそが」と叫ぼうと言うのだ。
「だらくそ、日本の伝統」とヘブンまで適当なことを言って、司之介に乗っかる。気の合う家族になりそうだ。







