【私の電話番号が漏れました】“出ない”だけで不動産営業が一気に引いた話
不動産営業といえば、「強引」「しつこい」というイメージを持つ人も多いでしょう。断っても電話が何回もかかってくる、そんなときはどうすればいいのでしょうか。本記事の書き手は棚田健大郎さん。1年間必死に勉強したのに宅建に落ちた経験をきっかけに、「勉強が苦手な人でも続けられる方法を作ろう」と決意。棚田さんの勉強法をまとめた『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の刊行を記念して、本記事をお届けします。

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“出ない”だけで不動産営業が一気に引いた話

 不動産業界の話をしていると、「飛び込み営業って、実際どうやってやってるんですか?」という質問をよくいただきます。不動産の営業は宅建業法の制約が厳しくて、最初に氏名と目的を告げなければならない、相手から「来ないでほしい」と言われたら訪問してはいけない、などルールに縛られています。

 たとえばインターホンを押して「こんにちは、◯◯ホームの山本と申します。今回は投資用マンションの紹介に上がりました」と言おうとしても、最後まで言わせてもらえず切られてしまうのではないか。結論から言えば、その通りです。現実はそう簡単に話を聞いてもらえません。

不動産営業の「法的ルール」とは?

 ここで一つ大事なのは、この話は「現場あるある」ではなく、宅建試験に出るレベルで、営業方法に細かいルールがあるということです。実際に出題された問題でも、たとえばこういうケースがあります。従業員が住宅の買取りを目的に訪問勧誘をしたところ、相手から「契約の意思がないので今後勧誘に来ないでほしい」と言われた。それなのに、後日、別の従業員に同じ目的で訪問させて勧誘を継続した。これ、宅建業法違反です。従業員が交代したって同じです。禁止されているのは「宅建業者として勧誘を継続すること」なので、担当者を変えて突撃し直すのはアウト。悪徳業者丸出し、という評価になる話です。要するに、断られたら同じ目的で突撃訪問はできない、という決まりがある。

 電話勧誘でも同じです。過去問では、23時頃に相手の自宅に電話をかけて勧誘し、相手を困惑させ生活の平穏を害した、というケースが出ています。これも違反です。深夜・早朝など、迷惑を覚えさせるような時間帯に電話をかける勧誘はダメ。ルールとしては結構はっきりしています。

なぜ、しつこい営業は減らないのか?

 じゃあ、ここまでルールがあるのに、なぜ現実にはしつこい電話や訪問がなくならないのか。ここが、不動産業界の「実態」の部分です。ポイントは、営業されているのは個人だということです。宅建業法なんて普通は知りません。特にターゲットになりやすいのは、地方に住んでいるのに都内のワンルーム投資用の区分所有を持っている人。こういう人は狙われやすい。なぜなら、過去に営業で買わされていることが多いからです。もちろん自分から買いに行く人もいますが、不動産投資って基本的には「買わされる」パターンが多い。しつこく押されて、根負けして買う。あるいは根負けして売る。そういう構図があるから、営業も“通る”前提で続いてしまうんです。

 私の意見をはっきり言うと、訪問営業なんかするな、です。特に不動産投資の突撃営業。あれは本当にやめた方がいい。投資用不動産の「買ってください」「売ってください」の飛び込みがほとんどで、マイホームを買ってくださいという突撃なんて、私は聞いたことがありません。今はITも発達していて、投資アプリ経由で見込み客のデータを集めたり、メールでやり取りしたり、紹介で回したり、やり方はいくらでもあるのに、わざわざ突撃するのは時代に合っていないと思います。

コロナ禍でも訪問営業はあった!

 怖いのは、営業がエスカレートすると発想まで危なくなることです。コロナ禍のとき「接触するな」「移動するな」という空気があったじゃないですか。あの時期でさえ、自宅への訪問営業がめちゃくちゃあったんです。しかも、逆に利用された。コロナ禍だから家にいる、普段会えない決定権者が家にいる、だから行く。恐ろしくないですか。そういう方向に行ってしまうのが、突撃営業の怖さです。背景には、投資物件の売買会社は管理会社のように毎月決まった固定収入が入るモデルではなく、常に売上を立て続けないと会社が維持できない、という事情があります。だから営業がきつくなる。きつくなると、強引な方向に寄る。これは構造的に起きやすい。

実話! 私の電話番号が漏れました!

 そして、ここからが私が「身をもって知った」話です。勧誘電話って、断れば止まると思っている人が多い。でも、それは甘いです。なぜなら、電話に出た瞬間に「この番号は出る番号」としてリスト化されるからです。大半の番号は使われていないか、繋がらないかで、時間が経つとリストから外れる。でも、出る番号は残る。いくら断りを入れても、何を言っても、出る限りはかかってきます。これは私が実際に実験して確信しました。

 私はある不動産会社に、あえて自分の電話番号を流したことがあります。その番号が、どういう経路でどう広がっていくのかを見たかったからです。結果、横流しされました。どういう仕組みで流れているのかは分かりませんが、こちらが全く教えていない不動産会社からも電話が来るようになった。つまり、どこかでリストが回っている。これ、経験すると本当に分かります。知らない番号から不動産の電話が鳴り続けるのは、偶然じゃなく仕組みです。

最強の対処法:電話に出ない!

 だから私が一番おすすめしている対処は、電話に出ちゃダメ、これです。知らない番号は出ない。出ないで着信拒否。出て断ればいい、は通用しません。出たら相手はテンションが上がります。「この番号、出た」となる。出て断ってくれる人はいい人に見えるから、営業側は「まだいけるかも」と思ってしまう。申し訳ないですけど、営業の現場ってそういうものです。だから善意で対応するほど、狙われる側に残ってしまう。

 もちろん、違反行為として取り締まろうと思えば手段はあります。通話を録音して、業者名を確認して、免許権者を調べて、証拠と一緒に送って取り締まってくださいと言うこともできる。でも、それをやっても必ず業務停止になるわけじゃないし、何より面倒です。実害が出ないと動かない、動けない。だから多くの人はそこまでやらない。結果として、しつこい勧誘はなくならない。だからこそ、自衛として一番効くのは「出ない」「拒否する」なんです。

 宅建業法には、断られたら勧誘継続禁止、従業員を変えてもダメ、深夜早朝の電話勧誘もダメ、というルールがある。試験ではきれいに出ます。でも現実には、ルールがあるからといって、必ず止まるわけじゃない。ここを勘違いすると、普通に疲弊します。だから、知らない番号には出ない。これだけは徹底してください。

(本原稿は、『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の著者の寄稿です)