『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、中高生の受験に役立つ「新年に聞くべきたった2つの質問」について解説します。

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新年最初の数週間を、親はもっと大事にしたほうがいい

「正直、新年のこの時期を、みんな軽く見すぎています」

これは自分が、進路指導の現場に立ち続ける中で、毎年のように感じていることです。自分は中学生・高校生、その保護者と向き合ってきましたが、1月上旬から中旬にかけての数週間は、1年の中で最も静かに、しかし確実に進路を動かせる時間だと断言できます。

2026年に入りました。新年という区切りの中で、多くの家庭では「今年どうする?」「新しい目標を立てよう」という会話が交わされていると思います。もちろん、それ自体は間違っていません。

ただ、ここで一つだけ、どうしても伝えておきたいことがあります。振り返りを飛ばした目標設定は、ほぼ確実に空回りします。

新年は「スタート」ではなく「棚卸し」から始めるべき理由

推薦入試の相談で、高校3年生にこんな質問をすることがあります。

「高校生活で、何が一番楽しかった?」
「中学・高校を通して、印象に残っていることは?」

すると、多くの生徒が言葉に詰まり、最終的にこう答えます。

「……正直、あまり覚えていません」

これは決して、その子の記憶力や思考力が低いからではありません。

原因は極めてシンプルです。主体性のない選択は、思い出として整理されないのです。部活、習い事、学校選び、進路の方向性。その多くを「親や先生が決めてくれた」場合、本人の中では出来事が“自分の物語”にならないまま流れていきます。

結果として、高校3年生になり、「これまでの経験をもとに自分を語ろう」としても、語る材料が少ないままになってしまいます。推薦入試でつまずく生徒の多くは、能力以前に振り返りの蓄積が圧倒的に足りないのです。

だからこそ、新年の今やるべきなのは、「今年どうするか」を決めることではなく、「去年(2025年に何が起きたのか)」を、本人の言葉で整理することなのです。

新年にこそ投げてほしい、たった2つの質問

方法はとてもシンプルです。時間は30分程度。食事をしながらで構いませんので、簡単な質問をしてほしいのです。

親が投げかけてほしいのは、次の2つの質問です。

・2025年で、一番楽しかったことベスト3は?
・2025年で、一番つらかった・難しかったことワースト3は?

「去年どうだった?」という聞き方では、人はほとんど何も思い出せません。しかし、「ベスト3」「ワースト3」と枠を与えると、頭は自然に動き始めます

もし「急に言われても出てこない」と言われたら、「じゃあ考えておいて、あとで教えて」と一度預ければいいでしょう。重要なのは、問いを投げることそのものです。人は、聞かれなければ振り返りません。そして振り返らなければ、自己理解は一生深まりません

振り返りは、進路を“決める”ためのものではない

この時間の目的は、「進路を今すぐ決めること」ではありません。むしろ逆です。楽しかったこと、つらかったことを並べていくと、その子がどこでエネルギーを使いやすい人なのかが、自然と浮かび上がってきます。

出来事そのものより「誰とやったか」をよく語る子。成果より「過程」を細かく話す子。人間関係の喜びや苦しさを強く覚えている子。こうした傾向は、将来の学びや進路を考えるうえで、極めて重要なヒントになります

ただし、ここで親が結論を出す必要はありません。分析は学校や塾の先生と一緒にすればいい。親にしかできない役割は、問いを投げ、言葉を引き出すことです。

理想を言えば、振り返りは定期的にやったほうがいいです。しかし現実には、忙しさの中で難しいですよね。だからこそ、新年最初のこのタイミングで一度だけ取り組んでみてください。完璧でなくて問題ありません。

この一歩があるかどうかで、数年後、高校3年生になったときの進路準備は驚くほど変わります。2026年のスタートは、前を見る前に、去年を言葉にすることから始めてみてください。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)