――大学で予防医学を学ぼうと思われたのはなぜですか。

 文部科学省と東京大学医科学研究所が共同して主催したプロジェクトのナビゲーター役を担当させていただいたとき、担当教授が「医学においては予防も重要なのに、一般に理解されていない」とお話しされたことが頭に残っていました。予防することで個人としては病院にかかる頻度が減るでしょうし、国としては全体医療費の削減につながります。私がその重要性を伝えるメッセンジャーになれたらいいと考え、10年に45歳で早稲田大学人間科学部eスクールに入学しました。

――しかし、いとうさんが3年生になる前に、師事しようと思っていた予防医学の先生が退職されてしまったそうですね。

 そうなのです。それで、3年生のゼミ選択で途方に暮れていたところ、同級生から、ロボット工学のゼミが面白いらしいと勧められたのです。そこからロボット工学の道に進むことになりました。

 そして、そのゼミに、現役の整形外科の医師が在籍していました。その方は、ご自身の患者さんの多くがロコモティブシンドローム(ロコモ。骨・関節・筋肉などの運動器の障害で移動機能が低下し、将来的に要介護になるリスクが高い状態)になっていくので、それをロボットで何とか変えたいと考えて入学されたというのです。お話を伺って、ロコモは今後の日本において大きな社会課題になると知りました。それで、私もロコモを予防できるようなロボットを開発できたらいいなと考えました。

――それで開発されたのが「ロコピョン」というロボットですか。

 いえ、最初からロコピョンだったわけではありません。大学生のときには、間違ったスクワットを検出するロボットを開発しました。日本整形外科学会ではロコモを予防するためにスクワットが推奨されていますが、高齢者は正しいスクワットができるとは限りませんので、間違った動きを検出してアラートを出す装置を開発したのです。

いとうまい子さんが健康寿命に興味を持ち、大学で予防医学とロボット工学を学んだ理由

 それを国際ロボット展の早稲田大学ブースで展示していたところ、神戸のセンサー企業の方が「この先も研究を続けるなら何かお手伝いしたい」と声をかけて下さいました。大学卒業でこの研究は終わりと思っていましたが、まだ恩返しができていないと感じていたので、その方の一言をきっかけに大学院進学を決めました。