せっかくお金をためても
使う気力がなければ幸せになれない

 まずは、「死ぬときに貯金ゼロ」という価値観が注目されるようになった背景について考えていきましょう。

 突然ですが、自分が年を重ねていった姿を想像してみてください。 

 老いれば老いるほど、お金を使えなくなっていくと思いませんか?

 定年退職まで身を粉にして働き、ようやく自由を手にしたときには、もう長いフライトで海外旅行に行く気力も、1日に何万歩も動き回って観光する体力も残っていないかもしれません。

 お金を貯めることだけに気を取られ、それを使う機会を逸してしまう。このことは、人生にとって取り返しのつかない大きな損失になりえます。

 結局のところ、老後を見据えて計画的に行っていたはずの貯金は、貯金通帳の数字を増やしただけにすぎなかった。こんな悲劇も、現実的に起こり得ます。

 最近になってようやくこの現実に気付き、次のような疑問を抱く人が出てきはじめたように思います。

・何のためにお金を貯め続けているのだろうか?
・貯金は本当に幸せにつながっているのか?

 特にお金が貯まりだしてくる40代から50代の方々にとって、健康寿命(男性が約72歳、女性が約75歳)に達するまでの時間は驚くほど短いものです。

 健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指します。この年齢を超えると、介護が必要であったり、他者の力を借りなければ生きていけなくなったりする可能性が高くなります。

 その状態になってなお、たくさんのお金を持っていたところで、使い切れずに一生を終えてしまうでしょう。

 冒頭の書籍などをきっかけに、こうした本質に気づき始めた40~50代が増えた結果、「元気なうちに貯めてきた資産を使うことに価値がある」という新しい考え方が支持されるようになってきたと考えられます。