グローバルでユーザーとディーラーの意識変容は起こるか?

 話を、SUBARUのブランド戦略に戻そう。

 ジャパンモビリティショー2025事前説明会の冒頭、「ブランドを際立てる」というメッセージを投影したが、これは単なるショーのテーマではなく、SUBARUが目指す事業戦略の本筋だ。

 これまでの事業戦略では、水平対向エンジン、シンメトリカルAWD、アイサイトといった商品の特長を強調することに主眼を置いてきた。

 近年では、EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド車)などの電動化と、アイサイト技術をさらに拡張する知能化という技術の2本柱を立てて次世代技術開発に邁進してきた。

 その上で、SUBARUの顧客はラリーやレースでの実績を持つSTI(SUBARUテクニカインターナショナル)を愛するファンと、日常から雪上・悪路まで対応できるSUV的なクルマを志向する人たちが混在している状況が続いてきたといえよう。

 ただし、SUBARUのグローバル販売の約7割を占める米国市場では「STIの知名度がとても低い」(STI幹部)という状況だ。

 米国では、2010年代にSUBARUがマーケティング活動の一環として始めたLOVEキャンペーンがSUBARUの予想を大きく越えて進化した。LOVEキャンペーンは自動車メーカーの販促活動の領域を越えた社会慈善活動であり、そうした社会貢献が米国におけるSUBARUのブランド価値を高めた。筆者はその経緯を米国各地で見てきたが、ユーザー、ディーラー、地域の人々がSUBARUブランドを愛している、名実ともにLOVEキャンペーンなのだ。

 見方を変えると、米国市場を起点とした大躍進はSUBARUが描いたブランド戦略の枠を越えてしまい、SUBARU自身でコントロールできなかったともいえるだろう。

 そうした中、SUBARUにとってまたも幸運が訪れた。それが「ウィルダネス」だ。

 米国でオーバーランドと呼ばれる冒険志向が強いライフスタイルに沿って、SUBARUの北米法人が主体で発案した社内ブランドで、フォレスター、クロストレック、アウトバックの最上級グレードとして設定されている。

 つまり、ウィルダネスはSUBARUにとって手の内感がしっかりある社内ブランドなのだ。

SUBARU「イノベーション・ハブ」で実施されたジャパンモビリティショー2025事前説明会の様子SUBARU「イノベーション・ハブ」で実施されたジャパンモビリティショー2025事前説明会の様子 Photo by K.M.

 この機に、SUBARUがこれまでに実施したことのない、グローバル規模でのブランド戦略を打った。

 それが、STIによる「パフォーマンス」とウィルダネスによる「アドベンチャー」をSUBARUブランドの大黒柱に据える戦略である。

 これら2つの柱が「際立つ」ことで、SUBARUブランド全体の存在価値を高めようというのだ。

 SUBARU幹部は常々「そもそもSUBARUは特化型のブランド。時代がどんなに変わっても、その枠を無理に変える必要はない」と発言してきた。

 そんな「SUBARUの常識」を超越するような、ブランドを「際立てる」という今回の事業戦略。

 果たして、SUBARUの思惑通りにグローバルでユーザーとディーラーの意識変容が生まれるだろうか。今後の動向を各地で確認していきたい。