まずレアアースの基礎知識から。単純に採掘シェアで考えるとアメリカやオーストラリアもある程度の世界シェアを持っています。ただそこには問題があります。採掘したレアアースにはウランなどの放射性元素が含まれるのです。

 そして精製の段階ではその放射性元素が濃縮されます。結果、1トンのレアアースを生産する過程で約1トンの放射性廃棄物が発生します。さらに産業廃棄物として排出される重金属を含む泥は約2000トンとなり、どちらも環境を汚染します。具体的には水質や土壌汚染が危惧されます。

 中国についでレアアースの精製が多い国がマレーシアですが、マレーシアでは実際に環境汚染が社会問題になっています。そのようなことから西側の先進国ではレアアースの精製に手を出しにくいのです。

 南鳥島のレアアースが脚光を浴びている理由のひとつが海底のレアアース泥は放射性元素の含有量が非常に少ないことです。採掘が軌道にのれば、その後の精製工場を設置しやすいわけです。

 ただ問題は3つあります。

 1つ目にして最大の問題は「地政学的な問題」で、もし日本が本格的にレアアースの精製に乗り出せば、中国がそれを黙ってみていることはないだろうということです。さらにふたつめの問題として精製が商業化するまでには5年以上かかるという「時間の問題」があります。これからの5年間、中国はレアアースの輸出規制を含め、あらゆる方法で日本の計画に対抗することが予想できるのです。

 3つめの問題については理由があって後述します。まずこのふたつの問題をどう乗り越えるかです。たとえばどんな事態に備える必要があるのかシナリオを考えてみましょう。

 南鳥島近海で日本政府が海上プラットフォームを建設し、1日350トンの泥を採掘する施設をつくったとします。その海域に突如、数百隻の漁船が現れたとします。これはあくまでシナリオですが、尖閣諸島の近辺で起きることと似た想定を考えてみましょう。

 それら漁船のうち何隻かは航行不能を訴えて、定期的に日本の海上プラットフォームに衝突する事故を起こします。あくまで事故です。ただプラットフォームの設備には甚大な損害が出るうえに、そのたびに設備の完工時期は後ろ倒しになります。