NAPAブランドを傘下に持つ米自動車部品小売企業ジェニュイン・パーツPhoto:NurPhoto/gettyimages

 古い格言である「安く買って、高く売る」には、キャッシュフローに関して必然的な帰結がある。「回収は早く、支払いは遅く」だ。

 だが企業が良いことをやり過ぎる場合もある。遅く支払うことで生まれるキャッシュフロー上の恩恵が、時として(少なくとも帳簿上は)驚くほど大きくなり、投資家が企業の財務力と流動性についてゆがんだ見方に陥る可能性がある。

 昨秋の米自動車部品メーカー、ファースト・ブランズの経営破綻は、長年使われてきた金融手法、特に「サプライチェーンファイナンス」と呼ばれる分野に改めて監視の目を向けさせた。新たな開示要件により、数年前と比べてこうした手法に関する透明性も増している。

 あらゆるセクターの投資家に対する教訓は、「キャッシュフローは決してうそをつかない」という格言が正しくないことだ。現時点で遅く支払う能力を持つ企業が、いつまでもそれを維持できるとは限らない。その能力を失えば、蓄えた現金が流出に転じる可能性がある。経済が踊り場局面に入った際には警戒すべきだ。

 自動車部品の小売業者は、そのような操作によって企業の財務がいかによく見えるかについて、非常に明白な例を示している。ファースト・ブランズの取引先だった ジェニュイン・パーツ や オライリー・オートモーティブ 、 オートゾーン などだ。

 会計アナリストを長年務めるデービッド・ザイオン氏が最近、S&P500種指数構成企業を対象に、このような金融手法がフリーキャッシュフローを押し上げる効果を計算したところ、この小売業者3社がランキング上位を占めた。自動車部品業界では何十万項目ものストック・キーピング・ユニット(SKU、在庫管理の最小単位)が設定されており、大抵は在庫として長期間保管され、小規模メーカーが製造している。小規模メーカーは取引先の大手企業よりも交渉力で弱い立場にある。

 サプライチェーンファイナンス(SCF)は次のように機能する。部品を作るメーカーは製造を続けるために今すぐ現金が必要だ。それを買う小売業者はできる限り長く現金を手元に置きたい。多くの場合、買い手は、売り手の請求額を早期に割り引いた金額で支払う銀行を売り手に紹介する。