【科学的に正しい速読】10年挫折して見つけた「速く読めて忘れない」読書法とは?
「読むのが速い人の秘密」とは?
読書中、私たちは文字を脳内で“音”に変換し、その音で理解しています。ポイントは「音の理解速度」。ここを鍛えれば、読書は一気に変わります。本連載は、耳から脳を鍛え、速読力を高める「速聴トレーニング」をお伝えするものです。脳を鍛えることで、理解力、記憶力、集中力もアップします。そのノウハウをまとめた『耳を鍛えて4倍速読』より内容を抜粋し、ご紹介します。

【科学的に正しい速読】10年挫折して見つけた「速く読めて忘れない」読書法とは?Photo: Adobe Stock

10年挫折して見つけた「速く読めて忘れない」読書法とは?

 はじめて速読に挫折してから、10年以上が経ちました。スクールに通い、本を読み、挑戦しては「意味のない速読はやめようF」と諦める。その繰り返しです。知人からは「ポイントさえつかめれば遅くてもいいじゃん」と言われ、ある速読スクールでは「脳内音読を止めれば速く読める」と教わりました。

 確かに、それで速く読めるようになりました。しかし読み終えた瞬間から内容が霧散し、数日後には「この本で何を学んだっけ?」と、タイトルすら思い出せない。結局それは、読書とは呼べない行為だったのです。

 理解を置き去りにした速読に、私は違和感を覚え続けました。でも同時に「本当に使える速読は存在しないのか……」という思いも頭をよぎりました。人間の目に限界があり、脳にも制限がある。しかし、その限界を踏まえたうえで、科学的根拠のある読書法があるはずだ―そう確信したのは、ある研究論文を目にしたときです。人間の脳には、文字を認識する明確なしくみがあることがわかりました。このしくみを理解することで、読書速度を着実に上げることができます。

 実際に私自身、この論文との出合いを機に読書速度を4倍上げることができました。理解と速度は、必ずしもトレードオフの関係ではありません。むしろ、脳のしくみに従えば従うほど、理解と速度の両立は可能になっていく。その理由を、これからご説明していきます。

脳が文字を認識する流れ

 私たちの脳は、文字を見てから理解するまでに、次の5つのプロセスを踏みます。

①文字を認識する(見る)
②視神経から、脳の視覚野に文字情報が送られる
③文字情報が聴覚野に送られ、音に変換される
④音に対して、脳内で単語や文法要素が検索される
⑤情報が言語野に送られ、文章として理解される
※説明の便宜上、直列の流れとして描いていますが、実際には相互作用や並行処理もあります。

 例えば目の前に「りんご」という文字があるとします。まず、目から入った文字は視神経を通って脳の後ろ側(視覚野)に送られ、ここで「り・ん・ご」という文字のパターンが認識されます。ですが、この段階ではまだ「形を見ただけ」。

 次に、この文字情報は聴覚野という場所に送られ、「りんご」という音に変換されます。ここが重要なポイントです。文字を見ただけの状態から、頭の中で音として認識する状態に変わる。人間の言語システムは「音」を基本にしており、黙読でも頭の中では確実に「音」が鳴っています。

 例えば「犬がボールを追いかける」という文字を読んだ場合、次の処理が行われているんです。

・目で文字を認識し、視覚野で処理
・「いぬ」「が」「ぼーる」「を」「おいかける」という音に変換
・記憶と照合して「いぬ」「ぼーる」「おいかける」などの意味を検索
・言語野で「犬がボールを追いかけている」シーンを理解

 ここまでの説明で、「従来の速読法」の欠陥が見えてきます。音に変換しない読書は、写真を撮っただけの状態。理解を置き去りにした「眺める」だけの行為になってしまうのです。

 実際、頭の中の音声を意図的に抑制すると文章の理解度が低下する、という報告もあります。つまり、音読をなくそうとするのではなく、「音の理解速度を上げる」方向にアプローチすればよいのです。これが、私が見つけた「科学的に正しい速読」の第一歩です。

(本原稿は『耳を鍛えて4倍速読』の一部抜粋・加筆を行ったものです)