多くの親は、自分の子どもが「勉強さえできていれば良い」とは思っていないはずだ。何かに打ち込み、コミュニケーション能力が高く、失敗しても立ち直れるたくましい子になってほしいと願っているだろう。しかし実際には、学力偏重の育てかたになっているケースも多い。
推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』で、このような間違いが起こるのは「9割の親が、自分の子ども時代の常識を信じているから」と指摘する。では、どのような教育をする必要があるのか。本書の内容をもとに解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

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「勉強しなさい」では、本物の学力は育たない

 親はつい子どもに「勉強しなさい」と言いがちだ。

「テストは高得点がいい」「英語は話せたほうがいい」――。

 そう考えるのは、親自身がその価値観を正解として育てられたからだろう。

 だが現代では、知識量や計算力などの「認知能力」以上に、自制心や協働性といった「非認知能力」が、人生の成功や学習の持続性を左右する力として注目を集めている。

 非認知能力とは、いわば「見えない学力」のことで、自制心や協働性、リーダーシップなど、共通の尺度や基準を使っての数値化は難しいけれど、実生活で重要な能力のことを言う。

 非認知能力があれば認知能力は必要ないわけではなく、非認知能力は認知能力を下支えする土台として機能している。

 学習計画を立てる、模試やテストを振り返って弱点を把握する。そうした計画性や継続力、集中力こそが、「学びの土台」となる力だ。

 では、この非認知能力は、どうすれば育てることができるのだろうか。

非認知能力は「親の関わり」で伸びる

 孫氏によれば、非認知能力は「自然には育たないもの」である。

意識して、機会を設け、言葉にし、対話し、振り返る。その繰り返しによって少しずつ育っていく力です。(P.66)

 さらに、孫氏は「非認知能力は、親御さんの関わりでしか強化できない面がある」と指摘する。

 孫氏が、親にしてもらいたいこととして挙げるのは次の2点だ。

・子どもに適切な経験をさせること
・その経験について、振り返り(内省)を促すこと(P.67)

「子どもに適切な経験をさせる」というのは誰もが思い浮かぶことだろう。

 失敗してもいいからチャレンジさせる、好きなことに没頭させる、興味のあることをまずやってみるといったことだ。

 そして、ただ挑戦させるだけでなく、もう一つ必要なのが、孫氏が挙げる「振り返り」だ。

「内省」が非認知能力を育てる

 この「振り返り」は、実は幼稚園児にはまだ難しいと孫氏は語る。

 たとえば、「今日は何をして遊んだの?」「楽しかった?」という問いに、「積み木! 楽しかった!」と答えることはできても、「何が楽しかったの? どう楽しかったの? なんで楽しかったの?」ということに関してなかなか思考がまとまらないのだという。

これは、脳の中で思考や感情のコントロールを担う前頭前野が、9~10歳ごろから18歳ごろまでで急速に発達するからです。この時期になると、初めて「自分の行動を客観的にみる力=セルフモニタリング力」が芽生えてきます。(P.69)

 前頭前野は、集中力や感情のコントロール、意欲、コミュニケーションなどを司る領域であり、非認知能力の土台とも言える部分だ。

9~10歳前後を境に、子どもは抽象的な概念を理解したり、科学的・論理的に考えたり、自分を客観的に見たりできるようになります。まさに非認知能力を大きく伸ばす絶好のチャンスが、この時期なのです。(P.69)

 そして、その時期に大事なのは「子どもの内省を促すコミュニケーションを取ること」だと孫氏は指摘する。

 負けたり失敗したりしたときに、「なぜうまくいかなかったのか」「次はどう準備すればよいのか」といった失敗の内側にある学びを見出せるようになると、それは自信と成長意欲の両方を高める絶好の機会になるのだ。

親がテストの点に一喜一憂してはいけない

 確かに、研究者にしろスポーツ選手にしろ、何かに取り組んで、うまくいかなかった場合「このやり方ではうまくいかないことがわかった」と捉え、失敗を「ダメなこと」とは受け止めないと聞く。

 そして、次はどのようにするかを考える際に、「ここはよかったが、こちらを変えてみよう」と考える。

 そうすることで、実現したい結果に一歩近づくのだろう。

 これは子どもに対しての親のアプローチにも同じことが言える。

 子どもが学校のテストで悪い点数を取ってきたとき、多くの親は反射的に「なんでこんな点数なの!?」「ちゃんと勉強してたの?」と言ってしまいがちだ。

 しかし、「この反応が、子どもの学びにおける非認知能力の発達を止めてしまっている」と孫氏は注意喚起する。

親がすべきは「経験」と「振り返り」の促し

 では、親はどのような働きかけをするべきか。

 孫氏は、子どもの非認知能力を豊かに育てられる家庭は、次のように声かけをするのだと語る。

子どもの非認知能力を豊かに育てられる家庭では、点数に一喜一憂するのではなく、「どうしてこの点数だったと思う?」「何か準備で工夫できたことはあったかな?」「次に活かせそうなことはある?」といった問いかけが自然と出てきます。これは、まさに子どもの内省を習慣化させる対話です。(P.72)

 このような問いかけは、結果そのものではなく、そこに至るまでの過程に目を向ける関わり方だ。

 一方、いい点数を取ってきたときの褒めかたも重要だ。結果だけを褒めてはいけないのだと孫氏は指摘する。

本来褒めるべきは、「計画的に勉強を進められたこと」「毎日20分間だけでも机に向かう習慣を続けられたこと」「自分から先生に質問できたこと」など、努力の中身=プロセスです。
点数という「表面」だけを評価していると、子どもはやがて、いい点数を取るために小手先でやり過ごすようになります。結果として、努力の積み重ねができず、思考力や主体性が育ちません。反対に、努力の質を見て評価される子は、自ら工夫し、継続する力を身につけていきます。(P.72-73)

 まずは、「何事も経験だ」とチャレンジさせる。そのうえで、プロセスを褒めたり、内省を促したりしていく。そうしたことが、子どもの非認知能力を育てていくことにつながるのだ。

 つい点数だけで判断してしまいがちだが、非認知能力が認知能力を下支えするという構造を理解し、その土台を育てるためにも、経験と振り返りをセットで提供することを心がけたいものだ。