『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、偏差値70の名門中学に受かった子の5年後の落とし穴について解説します。
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成績が取れない名門校、という落とし穴
中学受験や高校受験で学校を選ぶとき、多くの親御さんが最優先するのは「偏差値」です。できるだけ偏差値の高い学校に入れたい。その気持ちは、とてもよくわかります。
しかし、もしお子さんが将来、推薦入試を視野に入れているなら、この選び方は必ずしも正解ではありません。むしろ、偏差値の高い学校に入ったことが、推薦入試では不利に働くケースすらあるのです。
偏差値70の学校で評定3.8、偏差値55の学校で評定4.5
推薦入試で最も重要な要素の一つが、評定平均です。多くの大学が、出願条件として「評定平均4.0以上」「評定平均4.3以上」といった基準を設けています。ここで問題になるのが、高校によって成績の取りやすさが全く違うという現実です。
偏差値の高い進学校では、周囲の生徒も優秀です。定期テストの平均点も高く、相対評価で成績がつけられるため、どれだけ頑張っても「5」を取るのが非常に難しい。結果として、評定平均が3.8や4.0止まりになってしまうケースが少なくありません。
一方で、偏差値がやや低めの学校では、真面目に取り組めば評定4.5以上を維持できる可能性が高くなります。
推薦入試の出願条件を見たとき、前者は出願すらできないのに、後者は余裕で基準をクリアしている。この差は、決して小さくありません。
「名門校に入れば安心」が裏目に出る
よくあるのが、こういうパターンです。親は「少しでも偏差値の高い学校に」と考え、子どもを名門校に入学させます。しかし入学後、子どもは周囲のレベルの高さについていくのに精一杯。定期テストでは平均点を少し上回る程度で、評定は3~4が中心になってしまう。
高校3年生になって推薦入試を考えたとき、志望校の出願条件が「評定平均4.3以上」。でも自分の評定平均は3.9。あと一歩届かない。
このとき、親は「もっと頑張れば良かったのに」と思うかもしれません。でも実際には、子どもはその学校で評定4.3を取るために、相当な努力を要したはずです。
もし別の学校を選んでいたら、同じ努力で評定4.5を取れていたかもしれない。その差が、推薦入試の結果を大きく左右します。
ここには、明確なトレードオフがあります。偏差値の高い学校に入れば、周囲の刺激も大きく、学力は伸びやすい。しかし、評定平均は取りにくくなります。偏差値がやや低めの学校に入れば、評定平均は取りやすくなる。しかし、周囲の刺激は少なくなるかもしれません。
どちらが良いかは、お子さんが一般入試を目指すのか、推薦入試を目指すのかによって変わります。一般入試では、評定平均はほぼ関係ありません。学力勝負ですから、偏差値の高い学校で鍛えられることは大きなメリットです。しかし推薦入試では、評定平均が出願条件になります。どれだけ学力があっても、評定が足りなければ出願すらできません。



