AIが台頭し、世の中の変化が加速するなかで、知識量や暗記力だけでは通用しない時代になっている。推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏は自著『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』で、「『非認知能力』が近年のトレンドワード」だと語る。今、必要とされる「非認知能力」とは何か。本書の内容をもとに解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

勉強をする少年Photo: Adobe Stock

「勉強ができる」と「仕事ができる」を分ける決定的な力

 社会に出ると、高学歴でありながら「要領が悪い」「話が通じない」というタイプに出会うことがある。

 多くの人が「『勉強ができる』と『頭がいい』は別物」と実感する瞬間だろう。

 実際、社会で高く評価されるのは、偏差値の高さよりも、コミュニケーション力やリーダーシップ、相手の意図を汲み取る力に長けた人であることが少なくない。

 このように、偏差値や学力では測れない能力のことを、「非認知能力」と言う。

 そして、この「非認知能力」が、人生の成功や学習の持続性に深く関係している能力と考えられているのだそうだ。

人生を左右する“見えない学力”とは

 孫氏は、認知能力と非認知能力を次のように説明する。

・認知能力(=見える学力):知識の量、テストの点数、計算力や読解力といった、共通の尺度や基準を使って測定できる力
・非認知能力(=見えない学力):自制心、向上心、協働性、リーダーシップなど、共通の尺度や基準を使っての数値化は難しいけれど、実生活で重要な力(P.56-57)

 社会に出てからより求められるのは、非認知能力のほうだといえる。「人間力」がこれに当たるのだろう。

 では、これからの時代、認知能力……いわゆる「学力」は必要がないのだろうか。

成績が伸びない子の「意外な共通点」

 孫氏は認知能力と非認知能力の関係性について、次のように解説する。

非認知能力は、認知能力と対立するものではありません。むしろ、認知能力を下支えする土台として機能するのです。(P.58)
しっかりと勉強し、成果を出すためには、それぞれの科目の勉強そのもの以外にも、いろいろなことを行う必要が出てきます。学習計画を立てて、「何時からは勉強する」と考え、模試やテストを分析して「自分はここが弱いのかもしれない」と考える……。そんなふうに、計画性、継続力、集中力、素直に他人のアドバイスを受け入れる柔軟な姿勢など、いわば「学びに向かうための土台」が不可欠です。(中略)
そして、この土台となるものこそが、非認知能力なのです。(P.58-59)

 高額な家庭教師をつけても、成績が伸びないケースは少なくない。それは非認知能力が育っていないからなのだろう。

 孫氏は非認知能力のことを「『積み木を積むための平らな地面』のようなもの」と指摘する。

 では、どうすれば非認知能力を育てることができるのだろうか。

人間力を後天的に伸ばす「4つの要素」

 非認知能力はメンタルが影響しているように感じる要素が多い。そのため、「生まれ持った性格なのではないか」と感じる人も多いだろう。

 しかし、実際には非認知能力は後天的に育てることができる力なのだ。

 孫氏は、非認知能力を育成するための方法として、「BMSEモデル」という枠組みを紹介している。それは次のようなものだ。

【BMSEモデルとは】
非認知能力、認知能力などの力をより整理された形で説明するための構造で、Belief(信念)、Mind(意識・姿勢)、Skill(能力)、Experience(経験)の頭文字をとったもの。

⚫︎ Belief(信念)
自分のなかに揺るがない価値観や判断基準を持っているかどうか。
「なぜ自分はこれをやるのか?」といった問いに、自分なりの答えを、自分の言葉で答えられる状態が「Beliefがある状態」。
大きな野望ではなく、たとえ小さなことでも、「自分はこうありたい」という軸をある人は強い。
困難に直面したときも挑戦する勇気が湧き、行動の方向性がぶれにくくなる。

⚫︎ Mind(意識・姿勢)
信念に基づいて物事にどう向き合うかの意識や姿勢を指す。
信念があれば失敗を「恥ずかしいこと」や「敗北」として受け止めるのではなく、「学びのチャンス」として捉えられる。いわゆる「マインドセット」のこと。
Beliefが「なぜやるか」を決める軸だとすれば、Mindは「どう取り組むか」を決める姿勢。

⚫︎ Skill(能力)
実際の行動のなかで発揮される具体的な能力のこと。
これは、自制心や向上心といった「自分の内面に関わるスキル(対自的スキル)」、コミュニケーション能力やリーダーシップなどの「他者との関わりに関するスキル(対他的スキル)」に分けられる。
また、知識や思考力といった認知的スキルもその一部だ。
つまり、認知能力から非認知能力までを含む、広い意味での「行動に現れる力」といえる。

⚫︎ Experience経験
単なる「体験」ではなく、自分の感情や思考を揺さぶるような出来事を指す。
たとえば、失敗を通して感じた悔しさ、異なる価値観を持つ人との出会い、仲間と協力して何かを成し遂げた過程など、こうした経験が人の内面を動かし、BeliefやMindを磨いていく。
経験は、信念や意識を育てる「きっかけ」であり、同時に「結果」を可視化するものでもある。

学力を伸ばすには、土台をしっかり育ててから

 この4つは順番に積み上がるものではなく、「相互に影響し合いながら人の成長を支えている」と孫氏は語る。

 そのため、「Skill(能力)だけを取り出して伸ばそうとする教育」は無意味になることが多いという。

 たとえば、英語力やリーダーシップなどのスキルを伸ばそうと思っても、Belief(信念)やMind(意識・姿勢)が育っていないままでは、Skill(能力)は定着しないのだ。

 確かに、ただ英語を勉強するよりも、「海外の人と話してみたい!」「サッカー選手になるために海外留学したい!」などと目標がある方が断然身につくはずだ。

 学力という「結果」は、その土台となる信念や意識・姿勢が育ってこそ。このことは、しっかり理解しておきたいものである。