「国際交流ができる子どもに育ってほしい」「親の職業を継いでほしい」などと、親が子どもに一方的な期待を寄せてしまうことは少なくない。しかし、それがうまくいっていない家庭も多いのではないだろうか。
推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』で、「スキルを身につけさせたいと思って教育投資を行うけれど、全く意味のない投資になってしまうケースは多い」と注意喚起する。それはなぜなのか。本書の内容をもとに解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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「英語塾」より先に育てるべきもの
「これからの時代、英語は必須」と考え、熱心に教育投資を行う親は多い。
筆者の周りでも、子どもに対して熱心に英語教育を行っている人はかなりいる。
うまくいっている家庭、そうでない家庭がそれぞれあるが、いったい何が違うのだろうか。
孫氏は「スキルよりも先に、マインドの面を重視すべき」と指摘する。
本書では、子どもをマルチリンガルにしたい一心で、年間300万円以上を投じて複数の語学塾に通わせた家庭の例が挙げられている。
しかし、その子は言語に対する愛着も、それを使う目的も持っていなかった。結局、多額の投資は何の意味もない習い事で終わってしまったという。
いくら親がお金をかけても、子どもに興味関心がなければ意味がない。
当たり前のことのようだが、実際よくあることではないだろうか。
高額な教育費が「無意味」に終わる理由
なぜこのような失敗が起こるのか。
孫氏は「Belief(信念)やMind(意識・姿勢)が揃っていないからだ」と注意喚起する。
孫氏が語るBelief(信念)とは、「自分のなかに揺るがない価値観や判断基準を持っているかどうか」だ。
「なぜ自分はこれをやるのか?」といった問いに、自分なりの答えを、自分の言葉で答えられる状態が「Beliefがある状態」だ。
「たとえ小さなことでも、『自分はこうありたい』という軸のある人は強い」と孫氏は語る。
一方、Mind(意識・姿勢)は、信念に基づいて物事にどう向き合うかの意識や姿勢を指す。
信念があれば失敗を「恥ずかしいこと」や「敗北」として受け止めるのではなく、「学びのチャンス」として捉えられる。いわゆる「マインドセット」のことだ。
親がいくら塾や家庭教師をつけても、BeliefやMindが育っていなければ、学びは身につかない。そう考えると、この結果は想像に難くない。
子どもからしても「なんでこんなにお金をかけているのに、あなたはできるようにならないの!」と怒られてもいい迷惑である。
また、そういった叱責は「子どもの自己肯定感を大きく下げてしまうパターンもある」とのことなので、注意したい。
「医学部に行かせたい親」の致命的な誤解
たとえば、医学部を目指す家庭でも同様のことが言える。
親がいくら塾や家庭教師をつけても、子ども自身に「医師になりたい」という信念がなければ、成績は上がらない。
ここでいう「スキル」とは学力のことだ。
孫氏は「スキルの前に、信念やマインドを育てる。これは子育てにおいて、とても重要なファクターだと言えます」と指摘する。
人生の成功に必要なのは「非認知能力」
こうした「信念」や「マインド」のことを「非認知能力」という。
一方、「テストの点数」や「偏差値」「学力」など、点数化、数値化できるものは「認知能力」だ。
・非認知能力(=見えない学力):自制心、向上心、協働性、リーダーシップなど、共通の尺度や基準を使っての数値化は難しいけれど、実生活で重要な力(P.56-57)
従来、いわゆる「賢さ」とされてきたのは認知能力である。
しかし、近年では人生の成功や学習の持続性に深く関係している能力として「非認知能力」が必要なのではないかと教育学の分野で取り沙汰されるようになっているのだ。
そのため、「国際的な交流ができる子に育てたければ、英語を勉強させることよりも先に、違う価値観の人たちと触れ合う機会を意図的につくることが大事である」と孫氏は語る。
具体的には、外国人観光客が多い地域でのボランティア活動に参加させたり、留学生のホストファミリーを引き受けたりといったことだ。
そして、その後、家で「どんな発見があった?」「驚いたことは?」などと子どもに投げかけ、じっくり対話していく。そういった働きかけが大事になってくる。
もし、いまいち教育投資がうまくいっていないと感じる家庭は、スキルに対する投資だけになっていないか考えてみてほしい。
親がいろいろ望んでも、実際に努力をするのは子どもなのだ。
まずは、子どもの信念やマインドを育てることから始めたいものである。




