男の子の成績が伸び悩む原因は、勉強時間や塾選びではなく、「家庭での会話のあり方」にあるかもしれない。『男の子の学力の伸ばし方』では、学力が伸びる男の子の家庭に共通する条件として、「わからない」と素直に言える環境の重要性が繰り返し語られている。親が少し関わり方を変えるだけで、子どもはムダな努力を減らし、理解のスピードを大きく高めることができる。
本連載では、本書の内容から、子どもの計画・理解・反復・習慣のプロセスを体系化した「男の子の特性」に基づく学習法をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

勉強する男の子と父親Photo: Adobe Stock

「わからない」が言えない壁

 男の子の勉強が伸びないとき、多くの親は「努力が足りない」「集中力がない」と考えがちだ。

 しかし本書では、その前段階にある「理解のズレ」に注意を向けている。

 勉強は基本的に一人でするものだが、小学生が効率よく学ぶためには親子のコミュニケーションが欠かせない。

 自分がどこまでわかっていて、どこからわからないのかを言葉にできなければ、勉強は空回りしてしまう。

 本書には、次のように書かれている。

「自分がわかっていること・わからないこと」を、子どもが親に的確に伝えられないと、ムダな努力を重ねてしまう可能性がある(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 とくに男の子は、「わからない」と言うこと自体を負けだと感じやすい

 優位に立ちたいという脳の特性があるため、理解できていなくても「わかった」と言い張る傾向がある。

 しかし、わからないままでは勉強は楽しくならない。理解できない問題を前にすると、やる気そのものが削がれてしまうだろう。

父親の無言が与える影響

 本書で特に強調されているのが、父親の存在である。父親が無口で威圧的だと、男の子は次第に自分の考えを口にしなくなると著者は述べる。

 会社にも、「聞きたいことはあるが、近寄りがたい上司」がいる。子どもにとっての父親も、それと同じ存在になってしまう可能性がある。

 本書には、次の一文がある。

父親が無口で威圧的だと男の子はなにも言えなくなってしまいます(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 ここで問題なのは、怒鳴るかどうかではない。「話しかけにくい空気」そのものが、子どもの思考を止めてしまう点にある。

 男の子がわからないことを抱え込むと、理解のズレはどんどん大きくなる。

 一方で、家庭内に「わからない」と言える安心感があれば、男の子の成績は伸びやすいだろう。

「聞いていい空気」をつくる

 では、男の子が「わからない」と素直に言える家庭は、どのようにつくられているのか。

 本書が示している答えは、意外なほどシンプルである。

 それは、親が「教える側」に立ちすぎないことだ。特に父親は、正解を示し、効率よく解かせようとしがちである。

 しかしそれは、子どもにとって「評価される場」になってしまう。

 本書では、男の子がわからないことを隠してしまう背景として、「優位に立ちたい脳の特性」があると説明されている。

 だからこそ、親は「正しいかどうか」よりも、「どう考えたか」に耳を傾ける必要がある。

 答えが間違っていても、途中までの考えを受け止めることで、子どもは安心して話せるようになる。

 無理にしゃべらせる必要はない。「いつでも聞く姿勢がある」と伝わるだけで、男の子は自分から言葉を出し始める。

父親は「正解役」を降りる

 本書の内容を踏まえると、親に求められる役割は「教える人」ではない。むしろ、「一緒に考える人」である。

 子どもが問題につまずいたとき、すぐに答えを教えるのは簡単だ。しかしそれでは、子どもは自分の理解不足を言語化する機会を失ってしまう。

 著者は、父親のあり方について、次のように述べている。

そういうコミュニケーション下手からの脱却が必要です(『男の子の学力の伸ばし方』より)

 脱却とは、饒舌になることではない。問いを投げ、相づちを打ち、考えを待つ姿勢に切り替えることだ。

「どこまでわかった?」「ここが引っかかった?」といった短い問いかけだけでも十分である。

 男の子は、「聞かれている」と感じた瞬間に、頭の中を整理し始める。

学力が伸びる家庭の共通点

 本書を通して見えてくるのは、成績が伸びる家庭ほど、特別な教材や高度な指導をしていないという事実である。

 その代わりに徹底されているのが、「わからない」を出発点にできる空気づくりだ。わからないことを隠さず共有できるからこそ、理解のズレが小さいうちに修正される。

 結果として、ムダな反復や的外れな努力が減り、学習効率が高まる。これは才能やIQの問題ではない。

 家庭での会話が変わるだけで、男の子の勉強は大きく変わる可能性がある。本書が伝えているのは、派手なテクニックではなく、「学びが始まる土台」の話なのである。

 まずは今日一度だけでいい。「わからないところ、どこだった?」と静かに聞いてみてほしい。

 その一言が、男の子の理解と学力を動かす最初のスイッチになるかもしれない。