日本人は、自分の感情を
コントロールできる人が多い

 欧米人には自分を過大評価する傾向が強く見られ、日本人は謙虚さゆえにそのような傾向は見られないということは、学力に限らず、さまざまな能力や性質に関して当てはまる。ここでもうひとつ、自己コントロール力についてみておきたい。

 国立青少年教育振興機構が2017年に実施した「高校生の心と体の健康に関する調査」には、「私は怒った時や興奮している時でも自分をコントロールできるほうだ」という項目がある。この項目を肯定する高校生の比率は、アメリカでは81.6%、日本では63.6%となっている。つまり、腹が立ったり興奮したりしても自分をちゃんとコントロールできると答える者の比率は、アメリカの高校生の方がはるかに高い。

 だが、これはどうも怪しい。映画やドラマを見ても、アメリカ人はすぐに興奮し、感情的になり、モノを叩いたり、怒鳴ったり、人につかみかかったりする(全員がそうだとは言わないが)。どうもアメリカ人は攻撃的で、自分の感情をコントロールできない傾向があるように見える。

 このことは、高校生を対象とした調査データからも明らかである。「高校生の心と体の健康に関する調査」には、自分の日常的な感情面についての質問もある。

 そのデータをみると、「物を投げたり、壊したりしたくなる」という高校生の比率は、アメリカ28.6%、日本14.7%と、日本はアメリカのほぼ半分になっている。「人を責めたり、叫んだりしたくなる」という高校生の比率も、アメリカ23.1%、日本13.5%となっており、日本の方がはるかに低い。「誰かを殴ったり、傷つけたりしたくなる」という高校生の比率も、アメリカ26.4%、日本9.6%というように、2.5倍以上の開きが見られる。

 それなのに、「私は怒った時や興奮している時でも自分をコントロールできるほうだ」という項目を肯定する高校生の比率は、アメリカでは81.6%、日本では63.6%となっている。

 こうした結果は、自己肯定をめぐる文化的圧力の違いを如実にあらわすものと言える。アメリカの高校生は、日本の高校生と比べて、自分の衝動をコントロールすることができず、他人に対して著しく攻撃的・暴力的であるにも関わらず、自分をコントロールできると思い込んでいる、あるいはそのように答えざるを得ない文化的圧力が強く働いている。

 このような意味での自己を肯定する姿勢、現実の自分を振り返ることなく自己を肯定する姿勢を、日本の若者も見習うべきだというのだろうか。

 そうではないだろう。自分をちゃんと振り返ることをせず、自分を著しく過大評価し、「自分はすごい」「自分はできる」「自分に満足」などと言い切ることによって、自己肯定感の得点が高くなるのだとしたら、そのような得点を高めようとする必要などまったくないだろう。