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終身雇用制度が大きく変化して転職が容易になったこともあり、自分らしいキャリアづくりに熱心な最近の若者たち。しかし熱心になればなるほど、迷いや焦りも強くなるようだ。読者の中には、そんな若手社員たちの相談に乗る立場にある人も多いと思う。もし若手社員の相談に乗る際には、ぜひ青年期の出口でもがいている心理について分かっておいてほしい。(心理学博士、MP人間科学研究所代表 榎本博明)

20代はまだまだ
自分の生き方を模索する時期

 最近は、高校や大学でもキャリアづくりのための授業が行われているため、10代の若者たちは自分のキャリアについて考える機会が多いはずだ。そうした授業では、「自分らしいキャリアをつくろう」「自分らしさを意識しながら、将来どんな職業につきたいか、思い描いてみよう」などと言われる。

 しかし、まだ社会に出ていない学生にとって、自分にふさわしい将来の職業といわれても、具体的にイメージするのは難しい。アルバイトで経験できるのは、身近な店の店員など、ごく限られたものにすぎない。社会がどんどん複雑になり、IT化の流れの中で新たな仕事がつぎつぎに生まれてくる結果、多種多様な仕事がありすぎて、どの仕事に就いたらどんな生活になるのかといったイメージが湧きにくい。自分にふさわしい将来の職業がなかなか思い描けないのも当然だろう。

 そんな状況を生きる今どきの若者は、自分にふさわしい職業をめぐる迷いの中で、大きな不安と焦りを抱えている。「自分がやりたいことも分からないなんて、自分はダメだ」と自己嫌悪に陥る若者もいるが、趣味でなく仕事となれば、ただやりたいだけでなく稼ぎにつながらないといけないのだから、そう簡単に決まるものではない。

 そうした葛藤を抱えたまま、学校を卒業するにあたり、就職活動に取り組むことになる。迷いを抱えたまま就職するわけだし、望み通りの就職先に決まるとは限らない。とりあえずは職に就いたとしても、自分にふさわしい仕事をめぐる葛藤から解放されたわけではない。就職後も引き続き、「これでいいのだろうか」「これが自分にふさわしい仕事なのだろうか」といった思いに苛まれるのも当然と言える。

「この仕事が自分にふさわしいのか、よく分からない」「考えれば考えるほど、自分が何をしたいのか分からなくなった」といった悩みを口にする若手社員に対して、「何を甘えたことを言ってるんだ」と批判的な思いに駆られる人もいるようだ。だが、人生50年時代と違って、いまや人生80あるいは100年時代である。そんな今の20代は、自分の生き方をめぐってまだまだ迷いの多い時期なのである。