断定する前に持つべき“ある想像力”
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。
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映画から見る「夫婦の形」と「他者の目」
今日は「人間関係」をテーマにお話ししたいと思います。先日観た映画(ネタバレになるので作品名は伏せますが)は、ある殺人事件を扱った推理モノでした。
物語の中で、ある夫婦が登場します。奥さんが被害者になってしまうのですが、捜査が進む中で「夫婦仲は冷え切っていたのではないか」という疑惑が浮上します。
●夫婦喧嘩の声が近所に聞かれていた(家庭崩壊?)
周囲の証言や状況証拠からは、二人の関係が破綻しているように見えました。しかし、物語の結末で明かされた真実は全く違うものでした。実は二人は深く愛し合っていたのです。喧嘩をして家を出るようなことがあっても、それは彼らにとっての「日常」であり、コミュニケーションの一部でした。彼らの間には確かな愛情と信頼関係がありました。
この映画を観て改めて感じたのは、「人間関係の実態は、他人が見ただけでは全くわからない」ということです。
「見たいもの」しか見ない私たち
夫婦のことは夫婦にしかわかりませんし、家族のことは家族にしかわかりません。しかし、人間というのはどうしてもお節介な生き物です。自分の基準や価値観を他人に当てはめ、違和感を覚えると、謎の正義感から口を挟みたくなってしまいます。
特に他人のプライベートな部分は、本来見えないものです。だからこそ、覗き見えたごく一部の「自分にとって都合のいい情報」や「刺激的な情報」だけを繋ぎ合わせ、勝手なストーリーを作り上げてしまいがちです。そこに何かしらの利害関係や感情が絡めば、そのバイアスはさらに強まります。
もちろん、明らかな暴力や虐待など、警察や児童相談所に通報すべき緊急事態は別です。しかし、そうでない限り、基本的には「当事者のことは当事者に任せる」というスタンスが大切なのではないでしょうか。
ネット炎上と「野次馬」の心理
この話に関連して、最近話題になっている「ヤングケアラー」を取り上げたテレビ番組の件についても少し触れたいと思います。
放送内容に対してネット上で炎上や議論が起きていますが、テレビには演出の意図があり、編集されたものがすべて「真実」とは限りません。当事者や家族にしかわからない事情も必ず存在します。
もちろん問題意識を持つことは大切ですし、本当に支援が必要な場合は適切な機関が動くべきです。しかし、実態が不透明な中で、外部の人間がただ感情的に炎上させるのは、単なる「野次馬」になってしまっているようにも感じます。
子どもの権利や保護は非常に難しい問題で、子ども自身が被害を認識できなかったり、声を上げられなかったりするケースもあります。ですが、一般論として「家庭内の真実は、外からは見えにくい事情があるかもしれない」という想像力を、常に頭の片隅に置いておく必要があると思います。
「真実」は視点によって変わる
最近、作家の湊かなえさんの小説にハマっているのですが、まさに今日のテーマを突いています。登場人物それぞれの一人称で物語が語られるのですが、視点が変わると、それまで見えていた「事件の様相」がガラリと変わります。そして、最後に明かされる真実は、誰もが予想していなかったものだったりします。
これは私の精神科医としての臨床経験とも重なります。患者さんからお話を聞いていると、周囲から思われている状況と、ご本人が抱えている実情が全く違うことは多々あります。
無用なトラブルを避ける
今日の結論は少しふんわりとしてしまいますが、お伝えしたいのは以下のことです。
●外野からは理解できない関係性や事情があることを念頭に置く。
●自分たちの関係も、他人からは誤解されている可能性があると知っておく。
「わからないこともあるよね」という前提を持つだけで、無用なトラブルを避けたり、誰かを傷つけずに済んだりするのではないでしょうか。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。






