2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』がついに刊行。発売直後に大重版となり、坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
「仕事ができない」とは、何を指しているのか?
「◯◯は仕事ができない」
「あいつは使えない」
会社員の頃、何度聞いたかわからない言葉だ。
「新人のB子が仕事ができなくて困っている」という話を毎日のように同期から聞いたときは、「そこまで言われているB子ってどんな人なの?」と逆に興味が沸いた。
私は部署が違ったのでB子と直接やりとりをしたことがない。
「仕事ができない」とは、具体的に何を指すのだろう。
大きなミスを頻発しているとか、座っているだけで何もしていないとかいうわけではなさそうだ。
同期以外にもいろいろな人(人事部長にまで直接聞いた)にB子の話を聞き、統合してみると、B子は超マイペースなタイプであるらしかった。
先輩に叱られている最中にペットボトルのお茶を飲み、火に油を注ぐようなことをする。「今飲むな!話を聞け!」と先輩は怒り心頭なのだが、本人はまったくこたえていない。
先輩や上司からすると、「話が通じない」「何を考えているかわからない」と思うのだろう。
一方で、社内でもっとも怖いと恐れられている部長に「すみません、これお願いします」と平気で仕事を持って行ったりする。
話を聞いた人ほぼ全員(人事部長以外)が「あいつは仕事ができない」という評価を下していた。
「あいつは、ちょっとズレているんだよ」。
相性の問題なのに、
「仕事ができない」と決めつけてしまう
組織開発の専門家、勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感』の中に、相性が悪いだけなのに「あいつは仕事ができない」と言うことの問題が指摘されている箇所がある。
似たタイプの人が多い職場に、いきなり違う人が入ってきたとき、あいつは生意気、何を考えているかわからない、組織文化になじまないなどと嫌悪感を抱かれてしまうことはよくあるという。
自分が無意識のうちに嫌悪感を抱いたときは、「それは単に、持ち味の相違から来ているのかもしれない」と俯瞰して考えてみてほしいのです。
やってはいけないのは、「あいつは仕事ができない」と能力の問題にしたり、「あいつは嫌なやつだから」と人間性の問題にしたりすることです。
――『組織の違和感』p.155-156より
まさに、そんなことが起きていたような気がする。
B子はユニークな持ち味を持っていた。
勅使川原氏は、クライアントから「◯◯は仕事ができなくて、困っているんですよ」と相談を受けたとき「なるほど、あなたからはそう見えるんですね」と返すことにしているそうだ。
そう言われると、自分が「あいつは仕事ができない」という決めつけをしていることに気づける。決めつけから一歩自由になれる。
職場の異分子であること、相性の問題で「あいつは仕事ができない」と思い込んでいるのだとしたら、大事なのは、相手を変えようとするのではなく組み合わせを調整することだ。
それができないままだと、B子のように、逸材かもしれない人が職場を出ていくことになるだろう(実際、B子は数年で辞めてしまった)。
本書は職場で起こりがちな「決めつけ」に気づかせてくれる。それが職場を良くする第一歩になるのだ。
(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)
小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太