仕事が終われば次の仕事…
〆切のループに身を置いた
東京で働いていたときは、0時2分発の終電を逃して、タクシーで帰るということもざらだった。「24時間戦えますか」というCMが流行した時代である。
それにしても人の記憶というのは恐ろしいもので、ほとんどのことを忘れてしまったが、終電の時間だけは、今でも明確に記憶している。
それでも、私は仕事をこなすのは嫌いではなかった。むしろ、仕事が早いと上司に褒められれば、次々に仕事を請け負っていった。通勤電車の中もムダにはできない。イヤホンで英会話の勉強をしたり、仕事術の本を読んでは、仕事の効率化を図っていった。
旅行に行く時間などない。電車で遠出するとすれば、出張である。もちろん、出張の電車の中でもパソコンを開いて仕事をする。電車の中というのは、意外と仕事がはかどるのだ。
手帳のスケジュール欄に空白があるのがイヤで、空いた時間は仕事の予定で埋めた。そして、手帳にすき間なく予定が書かれていることで安心していた。
いつも何かに追い立てられていた。
仕事をしても仕事をしても、尽きることなく次々に新しい仕事がやってくる。
常に〆切に追われていた。
この仕事が終われば楽になると思い、その仕事を頑張っても、それが終われば次の〆切がやってきた。
仕事のスピードアップを図っても、どんなに効率化を図っても、時間が足りない。
減らせるのは睡眠時間だけだ。そう考えて、1日4時間睡眠で仕事していたこともあった。
それでも、「仕事が早い」と褒められれば、さらにスピードアップを目指した。
研究者になってからは、論文を100本書くのと、本を100冊書くのを目標にしていたこともある。
そんな苦労をしてついに、その目標を達成したとき、私の目の前に、まばゆい光に包まれた女神さまが現れ……ということは、まったくなく、私の日常は何も変わらなかった。
それ以外にも、さまざまな目標を設定しては、目標に向かって頑張ったが、「数値の目標」というのは、達成しても、何も変わらない。







