年金 老後不安の真実#1Photo by Kazutoshi Sumitomo

年金制度を、現状の賦課方式から積み立て方式に変えることで将来の給付への不安が解消するかのような議論がある。また、老後資金2000万円をためることが必須とする声もある。しかし、制度の変更そのものや資金をためることは、そうした年金問題の根本的な解決にはつながらない。特集『年金 老後不安の真実』(全7回)の#1では、元ゴールドマン・サックス金利トレーダーで『お金のむこうに人がいる』の著者、田内学氏と厚生労働省年金局数理課長の佐藤裕亮氏が根本的解決策について対談してもらった。(構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

生産物を増やすことこそが
将来の年金不安を解消する

――佐藤課長は、田内さんの著書である『お金のむこうに人がいる』に感銘を受けたそうですね。

佐藤 田内さんが年金問題の本質を非常に分かりやすく書いていた点に感銘を受けました。田内さんはどのようにして年金問題に関心を持ったのですか。

田内 ゴールドマン・サックスでお金を動かす仕事をしていましたが、いつもお金の本質とは何かを考えていました。お金がどんな問題でも解決してくれるのではなく、お金を使うことによって誰かが働く、誰かが問題を解決してくれるから効力を持つということが本質にあると考えていました。

 2019年6月に老後資金が2000万円不足するという金融庁の報告書が出されました。そのとき以降、お金をどうやってためようかと考える人が私の周りでも増えました。将来の不安があるからためようとするわけですが、みんなでためたところで将来の年金不安は解決しません。