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将棋界では、弟子との距離感や指導のあり方は実にさまざまだ。史上最年長でのタイトル歴がある木村一基は、一人ずつと丁寧に将棋を指し、言葉を交わすことを何より大切にしてきた。一方で、「棋士にとって将棋は趣味ではない」と、厳しい現実を突きつけることもためらわない。奨励会での戦いを突破してのプロ入りという狭き門を前に、進学や将来への不安に揺れる若者たち。木村は師匠として何を伝え、どう寄り添うのか。※本稿は、新聞記者の村瀬信也、棋士の木村一基『50代、それでも戦い続ける 将棋指しの衰勢と孤独と熱情と』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)一部を抜粋・編集したものです。
「直接話す」を大切にする
木村一基の指導スタイル
同じ道を目指す子どもたちに弟子入りを認めるか否か。そのスタンスは棋士によって大きく異なる。
弟子が多い棋士として有名なのが順位戦でA級に所属する糸谷哲郎や千田翔太らの師匠である森信雄で、14人が棋士に、5人が女流棋士になった。一方で、羽生善治のように弟子をとらない棋士もいる。
木村の師匠の佐瀬勇次は、共に名人獲得の経験がある米長邦雄や丸山忠久を始め、多くの棋士を育てた名伯楽だった。将来有望な子どもがいれば、声をかけて弟子として迎え入れた。木村が弟子をとるのを自然なことだと考えるようになったのは、師匠の姿を見ていたからかもしれない。
若手の頃には、テレビで弟子を「公開募集」したこともあった。
「NHKの将棋講座で講師を務めていた時に弟子を募集したことがあるんです。でも、誰も来なかった(笑)。縁がないのかなと思いましたね」
それから数年後、定期的に指導に行っていた将棋教室に通う少年を弟子にとることになる。それが高野智史だった。その後も弟子入り志願は相次ぎ、今では5人が奨励会に在籍して夢を追っている。
師弟の関係は、その間柄によってさまざまだ。かつては師匠が弟子に直接指導をしない師弟関係も多いとされてきたが、近年は師弟でぶつかり稽古をする例も増えているようだ。木村も弟子たちに1人ずつ指導することを心がけている。







