「直接会って将棋を指し、話をすることが大事だと思っています。何か悩んでいるな、ということもわかりますからね。ただ、学校に通っている子だとなかなか時間がとれず、ネットで対局することもあります。その点はちょっと残念です」
タイトル戦の解説などを見るとユーモアあふれる人気棋士という印象を受ける木村だが、弟子の前では「鬼」となる。面と向かってほめることは少ない。「棋士にとって将棋は趣味ではない」と考えるからだ。
「厳しい世界だときつく言っています。それでつらいようなら、さっさとやめたほうがいい」
5年前に取材した際に聞いた木村の言葉が心に残る。
プロ棋士を目指す若者に
大学進学は必要なのか
師匠の熱意に応えるように、弟子たちは着実に力をつけてきた。5人のうち4人は三段リーグに所属し、プロ入りまであと一歩に迫っている。ただ、その最後の階段を登るのが容易ではない。木村自身、人生を懸けたこの戦いの場で6年半という長い歳月を過ごした。
木村は言う。
「以前は弟子を育てるなら一流にしたいなと思っていました。でも本人たちは、まずは四段になることを目標にしている。最近は、そのためにどう寄り添えるかを考えるようになりましたね」
三段リーグには「26歳」という年齢制限がある。その日が迫ることに不安を抱きながら努力を続ける弟子たちの気持ちを、木村は身をもって知っている。
奨励会は通常、6級で入会するところからスタートする。好成績を残せば5級、4級と昇級し、プロ入りへと一歩ずつ近づく。その道のりは平坦ではないが、並行して奨励会員たちが頭を悩ませるのが進学問題だ。
棋士になって将棋を指すことだけを考えれば、学歴は直接は関係がない。受験勉強をするぐらいなら、その分将棋に打ち込んだほうがいいという考えも成り立つ。
だが、もし棋士になれなかった場合、「いい学校」に行っておいたほうがいいかもしれない――。奨励会員やその保護者たちは、そうした葛藤を抱えながら節目節目で決断を迫られる。かつては大学に通う奨励会員はめずらしかったが、近年は進学志向の高まりを受けて、大学に進学する奨励会員が増えている。







