組織を壊す「自分ファースト」な社員たち 木村政美写真はイメージです Photo:PIXTA

「ネジはもう買わないからな。嫌だったら土下座しに来い!」営業主任の怒りの電話&メールで、取引先の担当者が休職してしまった。納期遅れに対する催促は正当なクレームか、それともカスタマーハラスメントに当たるのか。企業間取引で起きたやりとりの「クレーム」と「ハラスメント」の境界線はどこにある?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
都内にある機器製造販売会社。従業員数300名。
<乙社概要>
顧客の注文に合わせたオーダーメイドの部品を製造販売している。技術力が高く特許を取得している製品も多い。

<登場人物>
A:甲社の営業主任。35歳。社内の商品企画コンペで優勝したのがきっかけで新商品の企画に携わることになり、そのための部品調達も担当するようになった。
B:乙社の担当者。入社2年目の24歳。
C:甲社の営業課長でAの上司。40歳。
D:甲社の顧問社労士。
甲社長:50歳。
乙社長:48歳。

「土下座しに来い!」気が利かない取引先に激怒

「『また納期が遅れます』だって?これで今月の延期は3度目だ」

 1月中旬。Aは眉間にしわを寄せ、Bから届いたメールを読むと立腹し、思わず机に置いてある受話器を上げた。

 甲社は1年前に新商品を開発し、製造販売をするにあたり乙社と新規契約を結んだ。しかし3カ月前からネジの原料となる金属の輸入調達が難しくなり、納期遅れが目立つようになった。甲社はそのネジがなければ新商品を製造できない。売れ行きには手ごたえを感じていただけに、思わぬところでつまずいた形だ。これでは注文を受けた顧客に対して迷惑がかかるし、会社の業績にも影響する。それに……。

「新商品の売り上げ目標を達成したら、甲社長から『次回の人事異動で営業課長にするから』と言われたばかり。課長になれば同期での出世頭になり、給料もボーナスもメチャメチャ上がるのに……。ここで邪魔されてたまるか」

 Aは納品遅れの原因について、Bから何回も事情を聞いていたが、「結局はそっちの言い訳だろ?謝るだけなら誰でもできる。君の声を聞くだけでイライラするよ」などと普段から強い口調で接していた。代替品を提案するなどすればいいのに、機転が利かないBを嫌っていたのだ。

 Aは電話に出たBに向かって、不機嫌な声で言った。

「メールを見たけど、またネジの納品が遅れるの?」
「申し訳ございません。前から何度もお話ししている通り……」

 謝罪し状況を説明しようとするBをAは遮った。

「また言い訳か。もう聞きあきた。こっちとしては、早くネジを作って入れてくれればいいんだよ」
「ですから……」

 Bの声はあきらかに震えていた。その様子を感じ取ったAは怒りをあらわにした。

「ネジはもう買わないからな。嫌だったら土下座しに来い!」

 言い終わると電話を一方的にガチャ切りした。