人手不足で困っている甲社。中途採用で30代社員を採ったところ、即戦力どころか驚くほど仕事ができないことが判明した。新入社員よりも仕事ができないのに、給料は当然新入社員よりも高い。能力が足りない社員の給料を下げることはできるのだろうか?(社会保険労務士 木村政美)
地方都市にある冷凍、チルド食品の製造卸売を営む会社。従業員数300人。
<登場人物>
A:昨年10月、総合職採用で入社、管理課勤務の30歳
B:今年4月入社した新卒社員。管理課勤務でAの後輩。22歳
C:管理課長でAとBの上司(以下「C課長」)40歳
D:総務部長(人事・労務管理の責任者で以下「D部長」)50歳
E:甲社の顧問社労士
中途採用のAがミスを連発
甲社の管理課では、顧客や営業担当から受けた注文を配送センターに取り次ぐ業務と、500種類ある取扱商品の在庫管理を行っている。メンバーは本来、課長、主任と一般社員8人の計10人だが、昨年9月末に1人が退職したので、10月1日付で後任者としてAを中途採用した。
その後、主任から業務レクチャーを受けたAは、配属から1カ月後に前任者の担当業務の全部を引き継いだ。しかし商品注文を受けた後、注文先、商品名や注文個数のデータを間違えて配送センターに送ったり、自分が担当している商品の在庫数の把握ができていなかったりなどのミスを連発した。