
「理由はとてもシンプル」「簡単な話だ」
「クワイエット!」
ヘブンは大きな声で制す。
「理由はとてもシンプル。これが人生だから。1年と少し光栄でした。ありがとございます」
ヘブン、情熱的だし、やさしさもあるけれど、時々、こんなふうにやけに乾いている。
教室の後ろで聞いている錦織(吉沢亮)のうなじが、第94回から続いて物悲しい。
お知らせはまだあった。庄田が次の校長になるというのだ。これはヘブンも知らなかったことで、教室は大騒ぎとなる。
「静粛に」と声をふり絞る錦織。
「簡単な話だ。わたしは帝大を出ていない」と告白する。
「簡単な話だ」はヘブンの「理由はシンプル」と合わせているように感じる。
「私は残念ながら落ちてしまった。帝大卒業はもちろん、英語の教員資格免許すらもっていない。そんな男が校長になれるわけない。簡単な話だ。だましていて申し訳なかった」
2度繰り返した「簡単な話」。この言葉が胸をつく。
ヘブンはシンプルに、松江との別れを決めた。このシンプルさが、錦織の心を深く傷つけたのではないだろうか。なにしろ、ただの通訳のように言われたときもかなり傷ついていたから。
どうせ簡単に切り捨てられるんだと、自分なんてとるに足らないと思ったのではないだろうか。錦織はあまりにもナイーブ過ぎる。
去っていく錦織をヘブンが追いかける。
ヘブンが(校長の件を)なんとかすると言うと、「そんなことじゃないんで」と、ずぶぬれで去っていく錦織。
悲しいかな、ヘブンは錦織の気持ちをわかっていない。ヘブンが松江を去るなら校長になる意味なんて錦織にはないのだ。
明治24年(1891年)11月15日、出発の日。桟橋。多くの人が見送りに来ているが、錦織は来ない。
トキは錦織に会いに行こうとヘブンの手を引っ張る。
「大丈夫
もう、大丈夫
別れる しました」
なんだか恋人同士の別れのような感じがする。







