魚タンパク特有の生理活性ペプチドは炎症や酸化ストレスを抑制し、筋分解の抑制やトレーニング後の回復促進にも寄与します。これらの特性により、スケソウダラのたんぱく質は筋量維持から筋肥大まで幅広く有効な食品素材といえます。

 ブルーゾーンの高齢者が、高齢になっても筋力を保ちながら老化が緩やかな理由の一つが、ここにあります。 

 さらに、魚の脂質は細胞膜の構造そのものにも関与します。細胞膜は情報伝達やホルモン応答を司る重要な器官ですが、加齢とともに硬くなり機能が低下します。DHAを多く含む魚を継続的に摂取することで細胞膜の柔軟性が保たれ、神経伝達や代謝調整が円滑に行われやすくなります。これは認知機能低下や生活習慣病の予防にもつながります。

 このようにブルーゾーンにおける海産物の役割は、単なる栄養補給ではなく、炎症、ホルモン、細胞構造という老化の根幹に同時に働きかける点にあります。

ミトコンドリア機能の維持は
なぜ老化スピードを穏やかにする?

 海産物が老化スピードを緩やかにするもう一つの重要な要因が、ミトコンドリア機能の維持です。ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生み出す器官であり、その性能低下は疲労感、筋力低下、免疫機能低下など、加齢に伴う変化の根本原因とされています。

 老化とは年齢を重ねることそのものではなく、ミトコンドリアの数と質が低下していく過程であるとも言われています。

 ブルーゾーンの高齢者は、年齢の割に基礎代謝が高く、日常生活における活動量も維持されています。その背景には、魚介類に豊富に含まれるDHAやEPA、タウリン、セレンなどが、ミトコンドリア膜の安定化や酸化防御に寄与している点があります。これらの成分は、損傷したミトコンドリアを除去し、新しいミトコンドリアを生成する仕組みを円滑にし、細胞の若返りサイクルを保ちます。

 加えて、ブルーゾーンで注目されているのが腸内環境の特徴です。沖縄や地中海沿岸地域の高齢者の腸内には、海藻などの発酵性食物繊維を分解できる多様な腸内細菌が存在します。これらの細菌は発酵過程で短鎖脂肪酸を産生し、腸の炎症を抑え、免疫バランスを整える働きを担います。腸内炎症が抑制されることで全身の慢性炎症も低下し、老化の連鎖が断ち切られます。