モーリタニア出張直前に、別件でその銀行を訪れると、前回の女性行員の1名が私に気づき、声をかけてくれた。

「せっかくだから、外貨定期預金していかれませんか?」

 彼女の話によると、日本円ではなく、米ドルに換えて預金すれば、お得に利子が増えていくという。以前、銀行員の友人から、「こうした商品を契約した行員には特典がある」という話を聞いていた。先日はお世話になったし、奢る程度のお返しではなく、少しくらい彼女たちの役に立とうと、思い切って100万円を投じることにした。

 商品の説明を受けてもすぐには理解できず、フンフンと知ったかぶりをして受け流し、「いいよいいよ」と話を進めた。

まんまとハニートラップに
引っかかったバッタ博士

「それではこちらのご確認を」と手渡されたのは、「重要事項説明確認書兼意向確認書」。

〈何この、おっかない書類!〉

 確認欄にチェックし、署名してくださいと言われたが、その物々しい書類に、何かとんでもないものに手を出してしまうのではないかと恐怖に駆られた。今はちょっと止めておこうかなと、後ろを振り返ったら、こないだの女性行員3名が立っているではないか。圧が、圧がすごい。彼女たちの、笑顔が怖い。

〈これか!これだったのか!〉

 私を飲みに誘ってくれた理由は、ここにあったのだ。今さら断ることはできない。えいや、と契約を結んだ。

 ここで別の疑問が湧いてきた。彼女らはなぜ、私に金銭的な余裕があることを知っていたのか……。

 思い起こせば、外国送金の手続きの際、お金の出所を証明するために銀行通帳を見せなければならない。そこには著作の印税がたっぷりと振り込まれていた。私は絶好のカモだった。

 救いだったのは、彼女たちはビジネスライクではなく、とても親身に「今解約したら1万円儲かりますよ」などと、機を見計らって連絡してくれた。契約後も、用済み扱いをせずに一緒に飲みに行ってくれた。

 その後、2人きりで飲みに行く仲になった方がいたが、色んなタイミングがズレてしまい、発展しなかった。とてもステキな方だった(ちなみに7年後、円安が進み、解約時には43万円増えていた)。