鞠つきも草むしりもできなくて…

 トキは暇を持て余し、鞠(まり)つきでもして遊ぼうとするが、クマはそれすら許さない。「万が一のこと」があったらいけないと言うのだ。

「おかしいね」とトキとフミは何もできない状態に困惑する。

 でも、これは、武家の女性に戻ったことでもある。ほら、タエ(北川景子)は襖(ふすま)すら自分で開けず、すべて使用人任せであった。やるのはお茶やお花。そう思うと武家の女性の1日って何をしているのだろう、と思ったとき、山川菊栄の『武家の女性』などが参考になる。

 暇なのは女性だけではない。隠居した司之介も日がな一日家にいて、草むしりくらいしかすることがない。でも草むしりもむしったら終わってしまう。あえてむしらないように我慢しているところをトキが……。

 レンコンからの草むしり、なんてのどかなのか。

「何も起こらないドラマ」とかねがねアナウンスされてきたが、いよいよ真骨頂である。

 ではここで、熊本編の注目ポイントを橋爪國臣チーフプロデュ―サーに聞いた。

――熊本をどう描く?

「熊本を舞台にするにあたり、わかりやすく熊本を表現することに苦労しました。

 熊本は当時、西南戦争で焼け野原になって、その後、10年くらいで新しい建物に建て替わっていた。しかも熊本城も焼け落ちていて、シンボルになるようなものが非常に少ない時期で、実際、小泉八雲もそのことに失望したようです。

 そんな中で熊本を表現するために我々がやったのは、戦争の匂いのある風景を作ることでした、当時、熊本は軍都と言われる軍事都市のひとつで、熊本城の敷地などもすべて軍隊の敷地になっていましたから、戦争の匂いのある風景を作り、街中に軍人のような人たちを配置しました。

 ヘブンが勤務することになった熊本第五高等中学校は、当時の建物が現存していて、熊本大学の一部になっているので、実際に外側を撮影させてもらいました。熊本の地元の人たちや熊本大学の学生さんたちにも撮影に協力してもらいました」

――ヘブンたちの新居は?

「庭にはソテツなど南の植物を増やしています。松江の庭にあったシャチホコは床の間に飾っています。実際は持ってきていないと思いますが、ドラマでは知事からもらったものということにしていますし、松野家は松江のものをいろいろ持っていったという設定にしました。いろいろ家の中を探してもらうと楽しいと思います。玄関には城山稲荷のキツネが飾ってあります。

 ほかには、少し都会っぽい雰囲気を出すため、建具にガラスを使っています。当時に松江に全くガラスがなかったわけではないですが、熊本という都会に来て、ガラスを使用するようになったという設定です」

「西南戦争の匂いが残る風景を…」戦後15年の“軍都・熊本”再現で工夫したポイント〈ばけばけ第96回〉
「西南戦争の匂いが残る風景を…」戦後15年の“軍都・熊本”再現で工夫したポイント〈ばけばけ第96回〉