「西南戦争の匂いが残る風景を…」戦後15年の“軍都・熊本”再現で工夫したポイント〈ばけばけ第96回〉

「思ってたのと違う」ヘブン落胆

 主題歌明け。ヘブンは出勤。人力車に乗る。車夫の永見(大西信満)も熊本に一緒に来ている。この人も住み込んでいるのだろうか。

 ヘブンが着ているファー付きの外套(がいとう)は錦織にもらったものだろう。

 ふと、何か思ったらしきヘブンは、丈と正木にじゃんけんで勝ったひとりを人力車の隣に座らせることにする。

 勝ったのは丈。

 横に座った丈を見て「オトウト」とつぶやくヘブン。錦織のことを思っているのだろう。

 人力車の横にはいつも錦織が座っていたことを思い出して、隣が空なのが寒く感じたようだ。

 主人を送り出したトキとフミ(池脇千鶴)は食事の後片付けをしようとするが、クマが「座っとってください」とさせてくれない。

 女中がいるのだからそういうものだろう。トキだって昔はこういうことをやっていたのだ。でもトキはクマほどクルクルと立ち働いているふうではなかった。

 給金をもらっているのだから「お手伝いをさせたら罰が当たります」とクマ。これを昔のトキに聞かせたい。こういう描写を脚本家はどう思って書いているのだろう。自分の書いたトキに自分で少しだけツッコミを入れたい気持ちなのだろうか。それとも視聴者がそう思うだろうと想定して書いているのだろうか。気になる。

 赴任した熊本第五高等中学校では、ヘブンがなんだか不調そう。どうやら手がかじかんでいるようだ。

 同僚の作山(橋本淳)にストーブをつけないかと言うと、「でしたら、ご自分で。マッチの場所をご存じですよね」となんだか冷たい。

 これが錦織だったら、ヘブンが言う前にストーブをつけてくれただろうと、ヘブンが思ったかわからないが、たぶん、思っただろう。

 コマネズミのようにくるくる立ち働く人が、女中のクマに取って代わって、ヘブンには錦織がいない。

 熊本生活は前途多難のようだ。

「熊本は暖かいと聞いてたのに……」

「思ってたの、違う」と落ち込むヘブン。

 期待外れは気候だけではない。熊本は15年前(明治10年、1877年)に起きた西南戦争で何もかも破壊され、ヘブンが愛する歴史あるものはなくなっていた。

 作山は、「今の時代は文明文化の強化」が必要で、だから外国人が招かれている。

 第六師団が軍事訓練をしている。

「日本の未来は明るい。もっと豊かで、西洋諸国と肩を並べる強い国になります」と作本。

 正午の知らせは大砲。

 ヘブンは大砲の音も嫌いだとぶつくさ言う。

 経済的に豊かで、働かなくてよくても、国が近代化して、強くなっても(つまり富国強兵)、何か物足りない。ヘブンも松野家もそれを感じている。