欠けているからこそ人に寄り添える

さわ:最後にこれに答えてもらって終わりにしてもいいですかね。「2人でメンタル疾患持ちで、旦那が高次脳機能障害プラス発達障害の傾向です。日々悩みは尽きません。金銭面が不安です」というね。私が先に答えさせてもらうと、『発達ユニークな子が持ってること』っていう本を去年発売させてもらったんですけど、この「発達ユニーク」っていう言葉を、タイトルにしたことにすごく私の中であの大きな思いがあって。今、発達障害とかグレーゾーンとかすごく言葉だけが一人歩きしちゃってるなって思うんですけど。そもそも私たちって全員が発達ユニークっていうか、いれぶんさんと私も、絶対同じタイミングで言葉を喋り始めてないし、同じように身長も伸びてないし。たとえ双子であっても、その成長、発達っていうのは誰しもがユニークなものなので。それに対して、もちろん精神科医なので必要に応じて、困ってる人には診断名をつけて福祉サービスを使うとかは必要なんですけど。そもそも私たち人類は発達がユニークなので、そのユニークさを理解する。例えばこだわりが強いとか、ちょっと集中力がないとか。そこの自己理解を深めることなんですよね。発達障害の特性が自分にどれぐらいあるか知る、っていうのは。それが結果的に、すごく生きやすくするツールのひとつだなと本当に思うんですよ。それゆえ自信を失っちゃうような経験も、もしかするとあるかもしれないんですけど、もっとそういう考えが広まることで生きやすくなってほしいなと思う。このご質問くださった方は、お二人でメンタルの疾患があるってことなんですけど。でもそれは、自己理解が深まってるっていう証拠なので。それで、じゃあ自分はどういう環境が適しているのかっていうふうに捉えてほしいな、ってすごく思いますね。

いれぶん:時間軸を長く、2年とか3年とかっていうふうに持っていけば、と思います。特に金銭面は、時間軸だけ長く取れるように計画を立てれば、ほとんどのことは上手くいくんで。例えばですけど、お金稼ぎたいっていうふうになって。半年とか1年とかでこれぐらい稼げるようにならないといけないっていうふうにみんな決めちゃうんですよ。「半年で7桁達成」とかね。じゃあ、X始めて半年で、月20万稼げるようになろうとか。いや、半年で成し遂げようと思っても、そんな簡単なもんじゃないし。私の中で言うと、2年とか3年のスパンで考えられればほとんどのことは上手くいく。例えば新しい資格を取ることもできると思うし。2年、3年毎日1時間積み重ねていけば、それこそ1000時間とかになるわけですから。ぜひご夫婦で協力しながら、長い時間軸でチャレンジしていくっていうところに、特に個性を活かしていただけるといいと思います。

さわ:そうですね。あとはこの本(『自分に自信が持てません』)の中に「欠けているからこそ人に寄り添える それがあなたの価値」と書いてあります。まさか、精神科医なのに親との関係で悩んだりだとか、子どもの不登校とかで、泣きながら、しんどい、とか発信することが、最初受け入れられるわけないと思ってたんですよ。「こんな精神科医は嫌だな」って思う人多分いると思うんですよ、今でも。だけど、「あ、精神科医の先生でもこんな悩むんだ」とか、「こんな泣くんだ」とか、「こんな弱いところあるんだ」っていうところが、なんか誰かの励みになる、っていうのが発信して初めて分かったんですよ。

いれぶん:それはおもしろいですね。

さわ:なんか、この本(『自分に自信が持てません』)、めちゃくちゃ読みやすいんですよ。是非これはですね、たくさんの人に手に取ってほしいなって。自信ないな、って思ってる人にほど手に取ってほしいなって思いますね。

いれぶん:ありがとうございます。

さわ:私もですね、いれぶんさんと同じく、ダイヤモンド社から本を出させていただきます。アメリカで、10代の方向けにメンタルヘルスで人気があった本の、翻訳本を監修するのを「監訳本」というらしいんですけど。不安になるメカニズムとか、なんで人は依存症になるんだろうとか、なんで人は鬱病になるんだろうとか。凄く、根本的なところを、専門家が読んでも勉強になるなと思うぐらい書かれています。でもこれ、実はボストンの美術の先生が書いたっていう。

いれぶん:おー。

さわ:美術の先生が若者たちのメンタルヘルスに興味があって、凄く勉強されて書いた本なんですね。やっぱり、医者が書くと結構小難しくなるじゃないですか。じゃなくて美術の先生が書いたっていうところがね、逆に私は凄くいいなと思っていて。

いれぶん:あはは。

さわ:『13歳からのメンタルヘルスの教科書』(ダイヤモンド社)っていうタイトルなんですけど。かつて子どもだった大人が読んでもね、十分、満足のいく内容になってますので。もしよければ、こちらも一緒に見てもらえると嬉しいです。

いれぶん:おー。

さわ:じゃあ40代最後の抱負をお願いします。

いれぶん:今日の話で私もちょっと気づいたんですけど。さわさんも弱いところがある精神科医、ってところが魅力で。私もいわゆるXのインフルエンサー的なところで言うと、凄く弱いところとか、何も凄いところがないっていうところがもしかしたら売りなのかなっていうに、先ほど、さわさんに言われて気づきました。

さわ:ははは。

いれぶん:まあでも、だからこそ、いれぶんの言葉を聞いてみようかな、と思ってくれる人がいる。なのでやっぱり、自分は自分らしく。あと1年で50代に突入するんですけど。40代最後の1年は、自分らしく過ごしていきたいなと思います。

精神科医さわ
自己啓発本を読んでも動けないのはなぜ? 誰でも簡単にできる「最初の数センチ」の進み方とは? 精神科医さわ×いれぶん対談(2)

児童精神科医、精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師
1984年三重県生まれ。開業医の家庭に生まれ、薬剤師の母親の英才教育のもと、医学部を目指す。偏差値のピークは小学4年生。中高時代は南山中学校高校女子部で落ちこぼれ、1浪の末に医学部へ。藤田医科大学医学部を卒業後、精神科の勤務医として、アルコール依存症をはじめ多くの患者と向き合う。母としては、発達特性のある子どもの育児に苦労しながらも、シングルマザーとして2人の娘を育てている。長女が不登校となり、発達障害と診断されたことで「自分と同じような子どもの発達特性や不登校に悩む親御さんの支えになりたい」と勤務していた精神病院を辞め、名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開業。老若男女、さまざまな年代の患者さんが訪れる。クリニックを受診した患者さんのお母さんたちからは、「悩みが解決し、まず自分が安心すればいいんだと思いはじめてから、おだやかにすごせるようになった」「同じ母親である先生の言葉がとても心強く、日々のSNS発信にも救われている」と言われている。「先生に会うと安心する」「生きる勇気をもらえた」と診察室で涙を流す患者さんも。開業直後から予約が殺到し、現在も毎月約400人の親子の診察を行っている。これまで延べ3万人以上の診察に携わっている。2023年11月医療法人霜月之会理事長となる。
いれぶん
自己啓発本を読んでも動けないのはなぜ? 誰でも簡単にできる「最初の数センチ」の進み方とは? 精神科医さわ×いれぶん対談(2)

1977年、岐阜県生まれ。会社員生活の23年間、店舗ビジネスのコンサルタントとして活動。300人を超える経営者と生々しい成功体験、失敗を多数経験する。自らは投資を失敗し、勤め先・家庭での信用すべてを失う。どん底を経験したことをきっかけに43歳で一念発起、発信活動をスタート。「何歳からでも遅くない」をテーマに、経験に基づくマインドセットやベーシックスキルなど人生をアップデートするヒントを発信し続けている。SNS総フォロワーは15万人超。2021年からは「全員で最高の生き方を手に入れる」オンラインコミュニティいれぶん塾を運営。塾生は卒業生を含め3000人超となる。