話し方についての本は数あれど、“おもろい話し方”というテーマの本はなかなかないのではないか。「ネタのゴーストライター」という元芸人のネタ作家が著者となり、ロングセラーになっているのが、『おもろい話し方――芸人だけが知っているウケる会話の法則』だ。もちろん芸人の笑いの真似はできないが、そのエッセンスで雑談力を高めることはできるという。今よりちょっとだけおもしろく話せるようになる、その極意やお作法とは?(文/上阪徹、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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「好かれる人」はリアクションがうまい
商談の場から日常的な雑談まで、もっとうまく話せるようにならないものか。
そんなふうに感じている人は少なくないだろう。
だからなのか、話し方やコミュニケーション術をテーマにし、ベストセラーになっている本はたくさんある。本書もそんななかでロングセラーとなっている1冊だ。
大きな特色は、著者の芝山大補氏がキングオブコントの準決勝にも進出した元芸人であり、今は「ネタのゴーストライター」というネタ作家であること。まさにお笑いのプロが“おもろい話し方”について教えてくれる本なのである。
思うように話せないのは、性格や会話のセンスに問題があるからではない、と著者は記す。
ただ単に「ちょっとした会話のコツ」を知らないだけなのだ、と。ほんの少し意識を変えたり、表現を変えたりするだけで、会話の盛り上がりやウケ具合、相手の印象は大きく変わるのだという。
第2章の“口下手でもウケる、好かれる!気のきいた「リアクション」の極意”では、好かれる人はリアクション上手であると説く。
リアクションで相手の話のおもしろさを際立たせたり、意外性のある一言を返して笑いを取ったりし、場を盛り上げるのです。
リアクション・返しがうまいと、みんなに好かれます。(P.62)
話し方といっても、一方的に話しているだけではいいコミュニケーションにならない。
相手がいて、キャッチボールをしながら盛り上がっていくものだからだ。リアクションのうまい人と話しているとおもしろく、気分がよくなるのである。
極意「行動にまで落とし込んで感想を伝える」
第2章の冒頭では、“話が盛り上がる5つの良いリアクション”として、「大きく相づちを打つ」「オーバーリアクションぎみに気持ちを伝える」「共感を伝える」「オウム返しで話のポイントを際立たせる」「話の終わりに余韻をつくる」が実例とともに解説されていく。
興味深いのは次の項目“相手がもっと喜ぶ「強い感想」のつくり方”だ。
たしかに感想を求められることはよくある。それに対して、どうリアクションできるか。
たとえば、上司から「このケーキ食べてみてよ」と言われてパクリと一口。そこであなたならどんな一言を言うか?
これだと平均点の回答と著者。まわりから好かれる人は、こんなふうに返すという。
これこそ極意、「行動にまで落とし込んで感想を伝える」だ。
映画でも食事でもプレゼントでも、単に「おもしろかった!」「美味しかった!」「うれしいです!」と伝えるだけではなく、「行動にまで落とし込んで感想を伝える」ことを心がける。
「どうしたいと思ったか?」で伝えるのだ。
そうすると「もう一回見に行きたくなったわ!」「誰かにオススメしたくなりました」「(プレゼントに)頬ずりしたいくらいです!」という「強い感想」にできる。
もう一つ、月並みな感想をパワーアップさせる「プラス一言」もある。何かをオススメされて感想を伝える場合、ありきたりな感想にちょっとした一言を付け加えるのだ。
たとえば、先輩にオススメされた映画を見たとき。
「上半期で」という「プラス一言」で印象は大きく変わる。これは芸人もよく使うという。
恥ずかしい行為をした人に「人生に一番冷たい目で見られてたで」、くだらないことを言った人に「番組始まって以来、一番しょうもないこと言うてたで」など、独特な言い回しで印象に残る感想にしている光景をよく見かける。
そしてこの「プラス一言」は、良い評価のときだけではない。「まずい」「おもしろくない」など、悪い評価を伝えるときにも使える。
・地球が誕生して以来一番すべったんじゃない?(P.73)
ちょっと言いづらいコメントも、おもしろさが加わって相手も受け入れやすくなる。悪い評価を言われたほうも「マズっ」「すべってるぞ」と言われるよりはいいし、笑いも生まれると著者は記す。
褒められ上手は、みんなに好かれる
もう一つ、第2章で興味深いのが、“「褒められたとき」に使える3つの好かれるリアクション”だ。友人や同僚、上司などに褒められる、という機会は少なくない。ただ、リアクションはなかなか難しい。
褒められたのはうれしいけれど、調子に乗っていると思われるのも嫌だし、謙遜しすぎても話ははずまない。
ただ、そんな誰もが悩みがちな状況だからこそ、上手に謙遜しつつサラッと会話を盛り上げられたら、印象は良くなる。褒められ上手は、みんなに好かれるというのだ。
褒められたときの鉄板の返しが3つ、紹介されている。
一つ目は、「自分で自分を持ち上げる」だ。ただ謙遜してもおもしろくないし、かえって嫌味になることもある。ならば、あえて褒め言葉に乗っかり、自分で自分を持ち上げることで自分を下げるのだ。
たとえば、「芝山さん、すごいですね」と褒められたとき、こう返す。
・そりゃあ、まあ天才だから?(P.117)
自分で言うなよ、というツッコミが返ってくる返し。自分を上げているように見せて、ちょい下げしている。これが、笑いとともに相手に好印象を与えるという。
さらに二つ目が「謙遜ボケ」。自分で自分を持ち上げる返しは、人によっては嫌味に感じられる場合もある。
ボケだとわかってもらえないような人もいるからだ。そんな人でも使えるのが、「謙遜ボケ」だという。自分以外のおかげにして謙遜しながらボケる。
「ありがとう。これが加工の力ってやつ?」
「(笑)」(P.120)
「いやあ、毎日『頭良くなりますように』って神様にお願いしたかいがあったわ」(P.120)
さらに三つ目の返しが「もう1回褒めさせる」。
相手に「もっと褒めて」と伝える王道のウケる返しだという。
「え、ありがとう。ちなみに……もう1回言ってもらっていい?」(P.122)
第2章では他にも「ボケられたときのうまい返し方5選」「イジリを笑いに変えるおもろい一言とは?」「おもろい人は無茶ぶりにこう対処する」などの極意が紹介されている。
リアクションも、お笑い視点で捉えられると「なるほど」というコツになる。
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』(日経ビジネス人文庫)、『彼らが成功する前に大切にしていたこと』(ダイヤモンド社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。




