飲みの席でもプレゼンの場でも、上手にみんなの関心を集めて、話に引き込んでいく人がいる。「あんなふうに話せたらいいのに」と羨ましく感じた経験がある人も少なくないだろう。実は、一気に話に引き込むために使える「上手な前置き」があるのだという。それを教えてくれるのは、『おもろい話し方 ~芸人だけが知っているウケる会話の法則』の著者で、元芸人でネタ作家である芝山大補氏だ。それは一体どのような「前置き」なのだろうか。本書の内容から、お笑い芸人の「エピソードトーク」を例に解説する。(構成:神代裕子)
興味を持って話を聞いてもらう秘訣
飲み会などで、複数人で話している際に、自分が話していたのに、気がつけばほかの人の話に持って行かれてしまったという経験をしたことはないだろうか。
こういった経験が「私の話なんて、みんな興味ないよね」という思い込みにつながったり、人前で話すのが苦手になる原因になったりする。
筆者ももちろん経験したことがある。落ち込むほどではないが、なんとなくその時の空気が忘れられず、「次の飲み会では大人しくみんなの話を聞いておこう」なんてこっそり心に誓ったりした。
とはいえ、やっぱり話す時は最後まで興味を持って聞いてもらいたいものだ。一体どうすればいいのだろうか。
芸人も素人も大事なのは「話の入り方」
こういった状況に常に晒されているのが、芸人の「エピソードトーク」だ。
もちろん、われわれ素人が芸人ばりにウケる話をしようとしなくてもいいのだが、「聞いてもらえる話し方」は参考になるようだ。
芝山氏は、「エピソードトークでは、その入り方も重要」と指摘する。
ここで注意したいのは「めっちゃおもしろい話があるんだよね」などと、ハードルを上げるわけではないということだ。
あくまでも「ハードルを上げずに、聞き手にオチまで聞きたいと思わせることが大切」なのだという。
タイトルを付けるだけでおもしろさアップ
その方法の一つとして芝山氏が挙げるのが、「話にタイトルを付ける」というテクニックだ。
また、タイトルを付けることで、オチが弱い話でも、話がうまくまとまって、おもしろくなるという効果もあります。(P.198)
他には、「オチへのツッコミフレーズを入れたタイトルを付ける方法」といったやり方も教えてくれる。
・なんやそれ! って言いたくなる話なんですけど
・ワケわからんわ! って叫びたくなる話なんだけど
・どうでもええわ! ってつい叫んだ話なんですけど(P.199)
こうしたツッコミフレーズを前置きとして入れておくと、聞いている人はツッコミに対応する「オチ」がどんな内容なのか、一気に気になってくるのだという。
そして最後に、前置きを回収する形で「ほんましょうもな!」「いや、どうでもええわ!」と自らツッコんで終わることで、ツッコミ自体がオチになっておもしろさがアップするのだ。
最初と最後にツッコミフレーズを入れるだけなので、簡単に取り入れられそうだ。
「共感」から始めるのも有効
芝山氏は、もう一つの前置きパターンとして「共感から始める」方法を提案する。
これは、聞き手に「あるある」と共感させることで、話に入り込ませるテクニックだという。具体的にはこうだ。
・人との距離が近い人っていますよね?
・どうにもやる気が出ない日ってあると思うんですけど
・つい美人やイケメンを目で追ってしまうことってありませんか?
こうした前置きが入るだけで、「あ~、そういう人いるいる」「あ~、わかるわかる」と思えて、一気に話に入り込めますし、興味もわいてきます。(P.201)
女性の話への返答は「解決策の提案よりも共感が大事」という話は有名だが、話し始める際にも共感が有効と言うのだから驚きだ。
プレゼンやスピーチにも使える「前置き」
この「共感から始める」話し方、なんと「プレゼンやスピーチにも使えるテクニックである」と芝山氏は語る。具体的には次のような形で使う。
・新郎の大補くんって「どこか抜けてるな」と思ったことがある人も多いと思うのですが(結婚式のスピーチ)
このように共感から始めると、聞き手の注意をグイッと集めることができます。(P.202)
確かに、この例を見ると読んでいるだけでも「うんうん」と頷きたくなる。話し手のことをよく知らない状態でも、「共感できるポイント」が明確にあることで、「この人の言っていること、わかる!」と思えるから、話を聞いてみる気になるのだろう。
話にタイトルをつける方法も、共感から始める方法も、「今からこんな話をしますよ」と、聞き手を話に誘導していく優しい手段だ。
コミュニケーションスキルやプレゼン力をアップさせるという意味でも、ぜひ取り入れたい方法である。