話し方についての本は数あれど、“おもろい話し方”というテーマの本はなかなかないのではないか。「ネタのゴーストライター」という元芸人のネタ作家が著者となり、ロングセラーになっているのが、『おもろい話し方――芸人だけが知っているウケる会話の法則』だ。もちろん芸人の笑いの真似はできないが、そのエッセンスで雑談力を高めることはできるという。今よりちょっとだけおもしろく話せるようになる、その極意やお作法とは?(文/上阪徹、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

なごやかに会話する初対面の人たちPhoto: Adobe Stock

「会話のハードルを下げる」とは?

 商談の場から日常的な雑談まで、もっとうまく話せるようにならないものか。

 そんなふうに感じている人は少なくないだろう。

 だからなのか、話し方やコミュニケーション術をテーマにし、ベストセラーになっている本はたくさんある。本書もそんななかでロングセラーとなっている1冊だ。

 大きな特色は、著者の芝山大補氏がキングオブコントの準決勝にも進出した元芸人であり、今は「ネタのゴーストライター」というネタ作家であること。まさにお笑いのプロが“おもろい話し方”について教えてくれる本なのである。

 思うように話せないのは、性格や会話のセンスに問題があるからではない、と著者は記す。

 ただ単に「ちょっとした会話のコツ」を知らないだけなのだ、と。

 ほんの少し意識を変えたり、表現を変えたりするだけで、会話の盛り上がりやウケ具合、相手の印象は大きく変わるのだという。

 実際、第1章“誰とでも会話がはずむ「おもろい人」の話し方”では、冒頭から意外に思える“コツ”が展開されていく。

特定の相手やシチュエーションで会話が盛り上がらない。
じつはその理由は単純明快です。
その人、そのコミュニティ、そのシチュエーションにおいて、あなたが「中身のある話しかしてはいけない」と思い込んでいるからです。(P.21)

 会話が続かない、会話がはずまない、初対面の人が苦手という人には、とっておきの方法があるのだという。それが「会話のハードルを下げる」ことだというのだ。

「中身のない話」を盛り込んでいく

 本の冒頭で、著者はこんな投げかけをする。

初対面の人と会ったとき、あなたはどんな話をしていますか?(P.3)

 そして、もしあなたが次のような質問をよくしているなら、ぜひこの本を読み進めてほしい、と。

・お仕事はなにをされているんですか?
・どちらに住まれていますか?
・出身はどちらですか?
・趣味はなんですか?(P.4)

 これは、やってはいけない質問の典型例なのだという。

 話が盛り上がらず、相手とも打ち解けられない。なぜかといえば、会話のハードルが高くなってしまうからだ。

 人は多くの場合、会話においてキャッチボールが生まれる話題を探そうとする。しかし、それは会話のハードルを上げ、話しづらい空気を作ってしまうのだという。

 こちらが中身のある話題を探してコミュニケーションを取ろうとすればするほど、相手も「中身のある話をしないといけない」と考え、話す内容を選ぶようになるからだ。

 お互いが肩肘を張った緊張状態を生んでしまうというわけである。

 初対面での会話となれば、思い当たる人もいるのではないだろうか。

 パーティではこういう質問をよくしがちだが、たしかにそこから話が盛り上がっていくことは簡単ではない。こちらが聞いても、相手から聞かれることがなかったりもする。

 では、初対面の相手でも会話をはずませ、距離を縮められる「コミュ力の高い人」は、どんな会話をしているのか。

・なんかココ、暑く(寒く)ないですか?
・今日、空気が乾燥してますよね
・見てくださいよ、さっき服汚れたんですよね(P.5)

「この人話しやすい」「話していて楽しい」と思ってもらえるような会話上手な人は、「中身のない話」を積極的に会話に織り交ぜるというのだ。

・なんか今日、肌カッサカサなんだけど
・ちょっと見てくださいよ! ここ電波1本ですよ
・あっ見て、猫いる(P.22-23)

 こうした「めちゃくちゃしょうもない、どうでもいい話」「中身のない発言」をすると、会話の心理的ハードルがグッと下がるのだという。そうすると、相手も発言しやすくなる。

 家族や友人など、親しい人とは、実はこんな中身のない会話が飛び交っているのではないか。それは、会話のハードルが下がり切った理想の状態だという。

 中身のない発言を織り交ぜているかどうか。そのシンプルな差が「話しやすい人」と「話づらい人」を分ける境界線だったというのだ。

キーワード、テーマでつないで話す意識

 会話を盛り上げていくためには、話がつながっていく必要があるが、そのヒントについても語られている。「キーワード、テーマでつないで話す意識」だ。

 基本的に会話は、流れの中で行われる。誰かが「趣味」の話をしたから自分も趣味の話をする。「学生時代」の話が出たならその話題でつなぐ。それが会話の基本形だと著者は記す。

 実は多くのバラエティ番組やトーク番組も、司会者がイジったり、ツッコんだり、ボケたりしながらキーワードやテーマをつないでいくのだという。もちろん、一般の人はプロの芸人のような真似はできないが、参考にはできる。

 例えば、こんなふうに日常での会話をつなげていけばいい。

「この前、営業でめっちゃ失敗してさ~、めっちゃへこんだんだよね」
「それは、しんどかったな~。失敗といえば、この前、スクランブル交差点で盛大にこけたんだよね」(P.27)
「市場のデータを考えると、A案がよいかと思います」
「なるほど、データといえば、こちらのデータではこんな傾向が見られまして……」(P.28)

 前の人が話した内容からキーワードを拾い、自分のトークにつなげていく。

 相手が話したキーワードからつなぐことで、自然な流れで、無駄にハードルを上げることなく話し始めることができるのだ。

「話が続かない」「なかなか話に入っていけない」という人は、キーワードやテーマを意識して話を聞くようにするといい。イメージとしては、自分の意識の相手の話に半分、残りの半分を「キーワード探し」にあてる。

 そしてキーワードや話題が見つかったら、相手の話に100%耳を傾ける。そして相手の話が終わったら、「◯◯といえば」と受けて、自分の話を始めればいい。

 また、自分の体験をおもしろおかしく話す一流の芸人たちは、トークの「三種の神器」で会話に引き込んでいるという。

まず大切なのが「擬音」「比較」「自分の気持ち」を話に取り入れること。
このトークの「三種の神器」を意識するだけで、聞き手の姿勢がグッと前のめりになり、話の印象は大きく変わります。(P.32)

「三種の神器」が実例とともに詳しく解説されるが、「臨場感を高める擬音」「普通と比較して話を際立たせる比較」「自分の気持ちを入れる」はたしかに芸人のトークでよく聞こえてくるものだ。

 他にも第1章では「出だしゆっくり、声低め」「お笑いの超基本、フリオチ」「笑える自虐、笑えない自虐」「気の利いた話の振り方」などが展開されていく。

 “おもろい人”の話し方には、「ちょっとしたコツ」があったのだ。

上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』(日経ビジネス人文庫)、『彼らが成功する前に大切にしていたこと』(ダイヤモンド社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。