話し方についての本は数あれど、“おもろい話し方”というテーマの本はなかなかないのではないか。「ネタのゴーストライター」という元芸人のネタ作家が著者となり、ロングセラーになっているのが、『おもろい話し方――芸人だけが知っているウケる会話の法則』だ。もちろん芸人の笑いの真似はできないが、そのエッセンスで雑談力を高めることはできるという。今よりちょっとだけおもしろく話せるようになる、その極意やお作法とは? (文/上阪徹、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
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ツッコミとは、失敗やすべりを笑いに変えること
商談の場から日常的な雑談まで、もっとうまく話せるようにならないものか。
そんなふうに感じている人は少なくないだろう。
だからなのか、話し方やコミュニケーション術をテーマにし、ベストセラーになっている本はたくさんある。本書もそんななかでロングセラーとなっている1冊だ。
大きな特色は、著者の芝山大補氏がキングオブコントの準決勝にも進出した元芸人であり、今は「ネタのゴーストライター」というネタ作家であること。
まさにお笑いのプロが“おもろい話し方”について教えてくれる本なのである。
思うように話せないのは、性格や会話のセンスに問題があるからではない、と著者は記す。
ただ単に「ちょっとした会話のコツ」を知らないだけなのだ、と。ほんの少し意識を変えたり、表現を変えたりするだけで、会話の盛り上がりやウケ具合、相手の印象は大きく変わるのだという。
第3章の“会話の最強の武器!!「ツッコミ」のお作法”では、ツッコミ上手なら話がはずむ、愛されると著者は説く。
ツッコミがいるだけで、ボケても気持ちいいですし、会話も盛り上がって楽しいからです。そのためツッコミ上手の人はまわりからも愛されます。(P.126)
だが、そもそもツッコミとはなんなのか、と思っている人も少なくないかもしれない。「なんでやねん!」「どないやねん!」と怒っているイメージはあるが、いったい何をしているのか?
端的にいえば、ツッコミとは「間違い探し」であり「違和感探し」なのだという。誰もが抱く違和感や非常識な部分を「常識」の視点で際立たせていくこと。これが、ツッコミの基本的な役割。
勘違いしてはいけないのは、相手を貶めるような言葉がツッコミではないこと。それでは笑いに繋がらないし、場も盛り上がらない。
正しいツッコミは、相手の失敗やすべりを笑いに変えてあげる技術だというのだ。
ツッコミは限られた人にしかできない技ではない
こんなふうに書かれると、「なんだか難しそうだし、自分のキャラにも合わなさそう……」と思う人もいるかもしれないが、安心してほしいという。ツッコミは決して限られた人にしかできない技ではない、と。
「なんでやねん!」「どないやねん!」と強くツッコめるような気が強い人だけができるわけではないのだという。
実は元芸人だった著者も、強いツッコミは大の苦手だったのだそうだ。ところが初めてツッコミをすることになったとき、自分なりに一流の芸人たちを観察したところ、ツッコミが上手い人に共通するポイントがあることに気づく。
・キレのあるセリフでツッコんでいる
・適切な「間(ま)」を考えている(P.129)
本書ではイラストをもとに解説がなされていくが、ツッコミの対象となる違和感や非常識が複数あったとしたらどうなるか。そこで大切になるのが、「誰もが感じる」こと。
「そうそう、そこがおかしいよね!」と誰もが真っ先に抱く違和感を言語化するから、まわりが共感でき、笑いにつながる。それにいかに気づき、速くツッコむか。
まわりがもっとも共感する箇所からツッコむ。
今、みんなが同じ違和感を抱いていると思ったタイミングでツッコむ。
「えっと……ハンバーグじゃない?」
「そうだそうだ! ああ、このあとバイト行きたくないな~」(P.135)
さてこの会話、どこがツッコミどころか。
そしてツッコミの基本は「1文1メッセージ」であることが重要だという。ツッコミのセリフが長すぎると、キレが悪くなるのだ。長いツッコミは説明っぽくなってしまい、ボケから間も空いてしまうため、おもしろさが弱まってしまう。
ツッコミどころが複数ある場合でも、一つひとつのセリフは短くする。1文1メッセージで短く伝えるのだ。
ツッコミ上級者のテクニック「たとえツッコミ」
興味深いのが、ツッコミ上級者のテクニック、「たとえツッコミ」だ。
モノや状況、有名人などにたとえてツッコむテクニック。これができれば、日常的ないろんな出来事を笑いに変えていけるかもしれない。
たとえば、「振り向いたら指をほっぺに押し当てられる」というボケをかまされたとする。「いや、なにしてんねん!」というツッコミもありだが、「くだらないイタズラをした」というポイントをより具体的にたとえられると、よりおもしろく感じられるという。
・いや、インターホンちゃうねん
・いや、ジブリのほのぼのシーンか(P.159)
他のモノや状況などにたとえて表現するだけで、おもしろさがいっそう際立ち、さらに笑えるようになる。
この「たとえツッコミ」を考えるときのコツが「クイズ化」だという。「この状況で想像できることは?」と考えて、「小学1年の男子」「インターホン」「ジブリのほのぼのシーン」などと連想されていったわけだ。
また「たとえ初心者」にオススメなのは、「数字」をたとえることだという。「高い・安い」「大きい・小さい」「長い・短い」「重い・軽い」など、金額や大きさ、長さなどを別の何かにたとえる。
例えば、100万円の値札をつけたブドウが売っているとする。ここで、「高すぎやろ!」と言っても意外性がない。
・一流企業のボーナスくらい高いやん!(P.163)
こうすると、ちょっと面白くなる。こうした数字のたとえは、千鳥の2人がよく使っているという。
また、「たとえ初心者」は「言い切らない」ほうがウケやすいとアドバイスする。「たとえ」が面白いのは、まわりが「たしかに!」と共感するからだ。
ここで、「◯◯やん!」と強く言い切ってしまうと、共感が得られない場合、すべってしまうおそれがある。また、「おもろいやろ!?」と笑いを狙いに言っている感じも出てしまう。
そこで、「~かな」「~みたいじゃない」と語尾を言い切らずに濁すのがいいそうだ。
たとえば、ボーダーのTシャツに、ボーダーのパンツを穿いている人を見かけたとする。「あの人、シマウマじゃん!」とは言い切らず「あれ見て、シマウマじゃない?」とあいまいに表現する、すると、狙っている感じがグッと減るのだそうだ。
第3章では他に、「なんでやねん! 一択を卒業しよう」「ツッコミの三段活用」「ツッコミは間が9割」「意図予想ツッコミが便利すぎる」「造語を使って~すぎる人を突っ込もう」などのツッコミお作法が解説されていく。
ツッコミにも、こんな考え方やコツがあったのか、と驚かされる。
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』(日経ビジネス人文庫)、『彼らが成功する前に大切にしていたこと』(ダイヤモンド社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。




