「100円ショップ」から「高級デパート」へ
日本株に対する評価が変わる
ハセン:なるほど。戦略的な分散先として、日本が選ばれていると。テスタさんは、この上昇相場の中で「日本株は割高だ」と感じることはありますか?
テスタ:難しい質問ですね。僕のポートフォリオでは、高配当株などは減らしています。株価が上がると配当利回りは下がってしまうので、以前のように「利回り5%で放置」みたいな銘柄は減りました。そういう意味では、割安な銘柄を探すのは昔より難しくなっています。
もっとも、「割高かどうか」というのは、その時点での指標だけで決めるものではないとも思っています。PER(株価収益率)の平均値も、時代によって適正水準は変わりますから。将来への期待が高まれば、PERが高くても許容されますし、逆に期待がなければ低くても買われない。
今が歴史的に見て割高なのかどうかは、後になってみないと分からないというのが本音です。
エミン:テスタさんの言う通りです。私はよくこう例えるんですがね、これまでの日本株は、実力があるのに「100円ショップ」だった。あまりにも安く放置されており、何でも安く買えた。
それが最近、企業の稼ぐ力やガバナンス改革が評価され始めて、ようやく「コンビニ」くらいの適正価格になりつつある。でも、私の見立てでは、最終的に日本株は「高級デパート」のような評価を得るポテンシャルがあると思っています。
ハセン:高級デパートですか! それはかなり強気ですね。
エミン:ええ。日本株には、まだまだ「伸びしろ」があります。例えば、企業の収益力を示すROE(自己資本利益率)を見てください。アメリカ企業は平均で20%近くありますが、日本企業はまだ8%台です。経営効率を改善し、ROEをアメリカ並みの20%に持っていくだけで、理論上、株価は倍以上になってもおかしくない。
今、東証の改革要請などもあって、企業が本気で資本効率を意識し始めています。100円ショップの商品が、品質を磨いてブランド化し、高級デパートに並ぶ過程にある。今買っておかないと、あとで海外の機関投資家から、高い値段で買い戻すことになるかもしれません。
為替の“水準訂正”に入った
1ドル200円時代は本当に来るのか
ハセン:マクロ的な視点では、為替の影響も気になります。円安が日本株を押し上げてきた側面はあると思いますが、今後、さらに円安が進むのか、それとも円高に戻るのか。視聴者からも「10年後は1ドル200円になると思いますか?」という質問が来ています。
エミン:1ドル200円は、あり得ない話ではないと思います。私は現在の為替水準を、単なる円安ではなく「水準訂正」が行われたと考えています。かつて「プラザ合意」で無理やり円高にさせられたのがバブル崩壊の遠因でしたが、今はその逆で、「逆プラザ合意」のような構図が、日米間で暗黙のうちに成立しているのではないかと。
ハセン:逆プラザ合意、ですか。
エミン:はい。アメリカは今、中国との対立を深めています。サプライチェーン(供給網)を中国から切り離し、同盟国である日本に戻したいと考えている。中国製のEVやロボットを使いたくないので、「日本で作ってください」という流れです。
日本でモノを作って輸出してもらうためには、円高では困る。ある程度の円安が必要です。だから、1ドル150円という水準は、アメリカもある程度容認しているし、むしろ望んでいるふしがある。将来的にはさらに水準訂正が進んで、1ドル200円という時代が来ても不思議ではありません。
ハセン:1ドル200円になったら、輸出企業の業績はさらに伸びそうですね。
テスタ:そうなると、海外売上比率の高い企業は強いですね。僕が持っている任天堂なんかも、売上の8割は海外ですから、為替の恩恵は大きいです。
日本の個人投資家マネーはまだ動いていない
本格的に流入すれば、株価の押し上げ要因に
ハセン:ここまでお話を伺っていると、海外投資家の動きや為替など、外部環境の追い風がすごいことは分かりました。一方で、私たち日本の個人投資家はどう動いているんでしょうか?
エミン:日本全体で見れば、個人投資家による本格的な日本株買いは、まだ始まってすらいないと私は思っています。
ハセン:えっ、これだけ新NISAが話題になっても、まだ始まっていないんですか?
エミン:データが証明しています。日本には2200兆円以上の個人金融資産がありますが、その半分が現預金として眠ったままです。メディアでこれだけ「株高だ」「投資ブームだ」と騒がれていても、大半の日本人の資金はまだ動いていないんです。
ハセン:確かに、僕の周りでも「投資を始めた」という人は増えましたけど、資産の大部分を株に移したという人は稀ですね。やっぱり「暴落が怖い」というイメージが根強いのかもしれません。
エミン:そうなんです。日本人は慎重ですからね。ここのところ、日本株はあまりにも調整しないで一本調子で上がってしまったので、「下がったら買おう」「押し目が来たら入ろう」と待っている人がものすごく多い。
だから、皮肉なことに「押し目が来ない」。少し下がると、待機していた資金がすぐに買いに入るから、下がらないんです。
ただ、このインフレ環境では、現金のまま持っていることは資産を目減りさせることと同じです。遅かれ早かれ、この眠れる巨額マネーが株式市場に雪崩を打って入ってくる時が来る。日本人は一斉に動く国民性がありますから、本格的なブームが来たら、日経平均30万円へのスピードは加速すると思いますよ。
上がりすぎに警戒感とリスク
相場の流れに乗りつつ逃げる準備も
ハセン:夢のある話ですが、リスクについても触れておきたいです。これだけ急ピッチに上がると、大きな調整、いわゆる暴落のリスクはありませんか?
エミン:もちろん、調整はいつ起きてもおかしくありません。ただ、そのきっかけは日本固有の問題ではなく、アメリカ市場が中心になるでしょう 。アメリカ株が崩れれば、日本株も連れ安します。
しかし、先ほど言ったように「下がったら買いたい」と思っている待機資金が日本にはたくさんあります。たとえ下がっても、そこは絶好の買い場となって、底堅く推移するのではないかと見ています。
テスタ:僕も同感です。半導体関連など一部の銘柄は確かに過熱感がありますが、全体を見ればまだ買われていない割安な銘柄もたくさんあります。
バブルかどうかというのは、その最中にいる時は誰にも分からないんですよね。後になって「あれはバブルだった」と分かるもので。だから、「上がりすぎだから売ろう」と決めつけるのではなく、相場の流れについていきつつ、何かあった時にはすぐ逃げられる準備をしておく。それが大事だと思います。
ハセン:なるほど。過度に恐れる必要はないけれど、シートベルトは締めておこう、ということですね。さて、ここまではマクロ経済や市場全体の流れについて伺ってきました。後半では、いよいよテスタさんとエミンさんが具体的に「どうやって銘柄を選んでいるのか」「いつ売買しているのか」という、実践的な投資戦略についてお聞きしていきたいと思います。
(2026年2月20日公開予定の「後編」へ続く)
本記事は2026年2月19日時点で知りうる情報を元に作成しております。本記事、本記事に登場する情報元を利用してのいかなる損害等について出版社、取材・制作協力者は一切の責任を負いません。投資は自己責任において行ってください。







