移民が純増することでその世帯数分だけ家が必要になるが、新規供給はそう簡単に増やすことはできない。住宅着工戸数は近年増えるどころか、減っている。2025年の全国新設住宅着工戸数は74万667戸となり、前年比6.5%減で3年連続の減少となった。
建設関係の労働者不足に加え、住宅よりもホテルやビルの稼働状況がいいため建築単価が高く、建設会社における住宅建設の優先順位は落ちている。
金融緩和が続く中で、建築単価の高騰は激しく、開発資金量は増えているが、建築単価で割った戸数や床面積は減少する状況にある。これ以上の資金量にしても仕事を受けきれない状況である。
日本全国にある「既存ストック」を
有効活用できないか
八方ふさがりのように思えるが、供給を新規に増やせなくても住宅数を実質的に増やす方法はある。それは既存ストックを使うことだ。幸い、日本は空き家が多い。2023(令和5)年の総務省「住宅・土地統計調査」によると、日本全国の空き家数は過去最多の約899.5万戸(約900万戸)に及ぶ。しかし、この住宅ストックは有効活用されていない。
その理由は、ほとんどが親から相続した戸建で、相続後に物置きになっているからである。その割合は、空き家の50%を超えている。こうなるのは、相続後の遺品整理・解体・売却が進まないためである。相続した人は相続で親の金融資産を少なからず手に入れており、固定資産税を払うだけの資力はある。このため、差し迫った対応をする必要になく、一向に不動産活用が進まない状況にある。
既存住宅活用の特効薬に、アップリートという仕組みが米国にはある。所有不動産を不動産投資信託(REIT)に現物出資し、その際に生まれる値上がり益を繰り延べできる。この制度によって、賃貸住宅が大量にREITに売却された経緯がある。売却にメリットがあれば、不動産は流動化する証左である。
これを応用して、不動産の売却を行った場合に、値上がり益への課税を期間限定で無しにするのはどうだろう?事態は急を要するので、相続で取得した不動産は親の世代から持っているため値上がり益が多い。
都市圏の土地価格は近年上昇しているので、その譲渡益が2000万円だとすると、税率は約20%なので、400万円得になる。一気に増えるのが問題なら、年度毎に先着順のボリュームを決めて進めるのでもいい。税制上、不公平と言うなら、補助金で税額を補填してもいい。要は住宅ストックを増やすと決めるか否かの問題だ。
これは、不動産投資対象の土地が大量流出することで賃貸住宅の供給も増える。もし、建築余力がないなら、最近の供給減少で供給余力を持つ戸建事業者に委託してもいい。それも無かったとしても、コンテナハウスならすぐに仮設住宅並みのものはできる。
衣食住において、食と住無しには人間は生きていけない。国民を苦しめてまで労働者の頭数を増やす政策は本末転倒である。既存の不動産市場の枠組にこだわらずに、知恵を絞り、即行動しなければ間に合わなくなってしまう。
(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)







