「賃貸は持ち家より得」と主張する人に欠けている視点、生涯コストは天と地の差Photo:PIXTA

「持ち家派vs.賃貸派」の論争が終わらない。だが筆者は、資産形成の観点では「持ち家が圧倒的有利」だと考えている。持ち家と賃貸物件の生涯コストを「ほぼ同じ」とする試算もよく見聞きするが、その結果も疑わしいというのが本音だ。持ち家のメリットを交えながら、そういえる理由を徹底解説する。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)

賃貸物件は本当に
持ち家よりも「お得」なのか?

「持ち家か、賃貸か」というのは永遠の論争だ。

 この論争では、持ち家にない「賃貸のメリット」として以下の4点が指摘されることが多い。

(1)引っ越ししやすい
(2)年収の変化に合わせて住居費をコントロールしやすい
(3)設備の交換や修理・修繕費用の負担がない
(4)固定資産税や都市計画税が不要である

 だが筆者は、この4点にそこまでの優位性があるとは思えない。

 上記の(1)は住み替えの話だ。

 賃貸物件から出ていく際は、転居の1~2カ月前に退去予告をしなければならない。それに対して、持ち家(マンション)を中古物件として売り出す際、販売開始から成約までに要する期間は通常3カ月だ。

 正直、引っ越しのしやすさは大して変わらないのが実態である。また、持ち家は一生住み続けられるが、賃貸は高齢になったときに契約できないことがある。年を取ったときのことを考慮すれば、どちらが住居として適しているかは自明だ。

 上記の(2)は家賃(または住宅ローン)の話だ。

 確かに賃貸住宅は、ライフステージの変化に応じて住み替えることで、家賃の金額を細かく調整できる。だが多くの場合、転居のたびに敷金・礼金が発生する。もし長めに住む場合は、数年おきに更新料も発生する。

 詳しくは後述するが、持ち家はローン完済後に住居費の負担が軽くなるのに対し、賃貸住宅での家賃の支払いは半永久的に続く。

 長いスパンで考えれば、持ち家の方が住居費を抑えられるケースも往々にしてあるだろう。必ずしも賃貸の方が「お得」だとは言い切れない。