ランから意外なことを聞かされるヘブン
女中(村岡希美)が呼びに来て、所用で一瞬ロバートが席を外したとき、ラン(蓮佛美沙子)が来て、トキにフィリピン滞在記の話が来ている話をしてしまったと明かす。
なんだってー というヘブンの顔。でつづく。
安井順平や村岡希美とほんの少しの出番に演技巧者たちが配置されていて、贅沢な回である。
子どもができたため女性が仕事を辞めざるを得ないという話はよくある。男性が、仕事と結婚生活と子どもの間で悩む話はあまりドラマで描かれない。実際は、結婚したら、子どもができたら、収入を増やさないといけないから夢を諦めて働こうと考えたり、収入アップを目指したり、男性だって岐路に立たされて悩むもの。
ヘブンはトキと子どものみならず、一家を支えなくてはならない。一家どころか書生や女中までも。昔は男尊女卑で、女性の地位が低かったと言われるが、長男が家族全員面倒を見ないといけないという重責を担っていて、長男にきょうだい全員がおぶさっていたということも聞く。
我が祖父も勉強が好きだったけれど学校に行かずに独学しながら働いて、弟を学校に通わせ、妹たちの生活も見ていた。男性――とくに家長的な人物は大変なのだ。という明治の日本のルールにヘブンは従っている。明治時代、社会進出したかった女性はしんどかっただろうけれど、男が家庭を守るものと決められていた男もつらいよ、なんじゃないだろうか。
ふじきみつ彦は、育児をしながら執筆活動をしていて、仕事の時間が限られてしまうが、前向きにとらえているというようなことをインタビューで語っていた。たぶんヘブンのほうに感情移入しているだろうと筆者は推察する。
では、最後にトキを診察する医師、黒田を演じた安井順平さんのコメントを紹介しよう。
「橋爪プロデューサーから連絡があり、ワンシーンだけなんですが安井さんに出演していただけないか、と打診がありました。二つ返事でOKしました。橋爪さんには『ブギウギ』で大変お世話になったご縁もあり、恩返しができるならと断る理由もありません。これは橋爪さんとの友情出演です。
もう一つのご縁でいうとウチの劇団が奇しくも2024年に小泉八雲の話を舞台でやっていたという奇縁も。ほんのワンシーンではありましたが、トキさんに幸せを告げる素敵なシーンに参加できて感無量です。幸せのお裾分けをいただきました。
撮影当日、大阪入りするとスタッフさんから『お帰りなさい』と言われたのがなんとも嬉(うれ)しかったなぁ」
安井さんの所属する劇団イキウメが上演したのは『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』、旅館にやってきたふたりの刑事が、滞在しているわけありな小説家から小泉八雲の怪談を聞く。怪談と現実の話が入り混じっていく不思議な話で、 安井さんは刑事のひとりを演じていた。
『ばけばけ』も『奇っ怪』も小泉八雲の書いたものから発想を大きく飛躍させて書かれた物語。安井さんの登場で、小泉八雲を現代で繋いでいる人達がいることを認識できたような気がする。









