大失敗は隠すもの――そう思っていませんか。アップルのNewton、アマゾンのFire Phone。鳴り物入りで外れたプロジェクトをどう扱うべきか。失敗を恐れる組織と、失敗を設計する組織。その差が未来を分けるとしたら、あなたの現場はどちらですか。
楽天グループ代表取締役会長兼社長・三木谷浩史氏をはじめ、Google元会長やZoomの創設者も絶賛する世界的ベストセラー『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』をもとに解説します。
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大失敗を成功の糧とするには?
アップルはPC業界からスタートしたが、いまやiPhoneがその収益の40%以上を稼ぎ出している。
iPhoneの成功については誰もが知るところだが、アップルは失敗も多数経験している。
初期のアップルのタブレット端末である「ニュートン(Newton)」を覚えているだろうか。
記憶にないかもしれない。1993年に発売されたニュートンは、初年度に100万台売れると見込まれていたが、最初の3カ月の販売台数はわずか5万台にとどまり、1997年に正式に販売終了となった。
また、あなたが覚えているかどうか定かではないニュートンシリーズは、他の多くの製品も世間の注目を浴びることはなかった。
同様に、アマゾンのクラウド部門であるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とその広告事業からの利益は、いまやアマゾンの営業利益の優に半分以上を占める。
だが、AWSもアマゾンの広告事業も、立ち上げ当初は物議を醸す小さなアイデアにすぎなかった。
そしてもちろん、アマゾンが投入した他の多くの製品も、大失敗に終わっている。
こうした大失敗の一例が、2014年に鳴り物入りで発売された「ファイアフォン(Fire Phone)」だ。
アマゾンの創業者で当時CEOだったジェフ・ベゾスは、シアトルのアート地区フリーモントにある同社のスタジオで、自らこの製品をお披露目した。
それは数百人の従業員による4年にわたる懸命な努力がようやく実を結んだ瞬間だった。
ところが、このスマートフォンが650ドルという価格で発売されると、顧客からの反応は冷ややかだった。ファイアフォンは最初の2週間で辛うじて3万5000台売れただけだった。
同じ年、アップルのiPhoneは(ファイアフォンと同じ価格で)発売から24時間で400万台を売り上げた。
アマゾンにとっては屈辱的な結果だった。
650ドルのファイアフォンは、その機能に対して価格が高すぎたことに加え、不必要な機能と使いにくいユーザーインターフェースが批評家に酷評された。
数カ月後、アマゾンはこのプロジェクトの特別損失を計上した。
ファイアフォンの失敗談は、それ自体はよくあることだ。この話の異例な点は、その失敗に対するアマゾン経営陣の受け止め方にある。
従来の組織であれば、同製品の統括責任者は降格かクビになり、CEOは人事処分を行った後、その失敗をひた隠し、忘れ去るべき悪夢として片づけただろう。
しかし、アマゾンでは逆のことが起きた。
ジェフ・ベゾスはいまだに、アマゾンが手掛けたどの事業よりも頻繁にファイアフォンに言及している。
ジャーナリストに対し、得意げにこう語ったりもする。
「私たちは今、これまでよりはるかに大きな失敗の数々に取り組んでいます。ふざけてはいません。その一部は、ファイアフォンをとるに足らないささいな失敗に見せるでしょう」
もちろん、ファイアフォンのような失敗は、アマゾンのスマートスピーカー「エコー(Echo)」のような成功によって帳尻を合わせる必要がある。
控えめに言っても、エコーは大ヒットした。いまや数千万世帯がエコーを使っている。
驚くかもしれないが、この製品の発売を主導したのは、イアン・フリードというファイアフォンの責任者と同じ人物だ。
「ファイアフォンについて1分たりとも後悔しないでほしい。眠れないほど気をもんだりしないと約束してくれ」。
ファイアフォンの失敗後、ジェフ・ベゾスはそう声をかけ、フリードを安心させた。
アマゾンの急速な台頭と継続的な成功は、ベゾスとその配下の幹部が失敗に対するアプローチにVCの思考法を用いていることによるところが大きい。
従来の組織はアマゾンから学べるだろう。
(本記事は『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』から一部を抜粋・編集しています)







