板垣李光人の「台本になかったセリフ」が最高!シーンの格が上がったワケ〈ばけばけ第113回〉

きたー「雨清水トキ → 丑三つ時」

「勘太をつれて。お許しをいただきました。事情を理解してくださり、快く、3人を雨清水様の籍に入れてくださるそうです」

 え〜 そんな手回しのよさってありか。最終回までこの週を入れて3週。時間がないからはしょったなと筆者は思う。

 初孫を勝手に見せに行くって情緒の欠片(かけら)もない。

 司之介が勘太を勝手に見せにいったことを謝った。そのとおり! と思ったらフミが、「そっちじゃないでしょう」とツッコんだ。

「いや、それもそうなんだけど」と付け加える。

 平謝りのふたりだが、トキは笑いだした。ちょっと引き笑いで奇妙な笑いだ。

 ヘブンも気づいて、ふたりではしゃぎだした。

 わかった! とフミ。

 最後までわからないのは、司之介。

 雨清水トキ → 丑三つ時

 ここだけ文字の級数を大きくしたいくらいだ。

 トキは自分の名前に大喜び。

 丑三つ時とは深夜、誰かを呪う丑の時参りを行う時間である。

 第1話で、松野家が変わりゆく世の中を恨んで行っていた儀式である。

 これはいわゆる「ロングパス」と言われる手法で、伏線回収に長い時間がかかるものを指す。

 筆者は以前、橋爪國臣チーフプロデューサーに、雨清水とトキは、丑三つ時にかけた名前ですか、と聞いたことがある。だがそのときは「どうでしょう」と濁された。ここまで引っ張るつもりだったからだろう。

 しかし、このシリアスな局面でこの名前が出てくるとは予想外だった。

 ひとしきりはしゃいだあと、トキは真顔になる。劇伴もしっとりしたものが流れる。

「松野トキだなくなるのは寂しい。寂しいいうか、ずっと松野トキだったけん。けど。松野だろうが、雨清水だろうが、父上が父上で、母上が、母上なのは、変わらん。なんも変わらん」

 劇伴が雨だれみたいに筆者には聞こえた。

「この家が役に立ってよかった」

 雨清水家では、三之丞(板垣李光人)がタエから、事情を聞いて、そうつぶやく。

「時に、生きていることが恥だと思ったことも、なかったわけではありません」

 時にってトキとかけたダジャレをタエまで!? というのはさておき。