一番の見どころは世界一高いビル、ドバイのブルジュ・ハリファの高層階で窓の外をよじのぼり、駆け降りるスタントを自分自身でやっているところで、この作品からクルーズのスタントは規格外に常軌を逸するものになった。

 もはや、ユタの崖で自分の身体1つで行うスタントではない。雲の上までそびえたつブルジュ・ハリファの高層階での撮影は、スタッフ、他のキャストも含めて周到な準備とそれを可能にする機材も必要になったはずだ。

 ブルジュ・ハリファは目の前で見ると、この世のものとは思えない大きさの建物である。その高層階でワイヤー1本の命綱のみを頼りに「落ちませんように」と祈りながら撮影したクルーズの興奮と覚悟は想像するに余りある。地上1700フィート以上の高さでは、気圧も風圧も気温も地上とは全く違う。

 砂漠の隣にある街ドバイは灼熱地獄になる場所でもある。クルーズは別の場所に同様の環境を造り、何カ月ものトレーニングでこの撮影準備をした。そしてまさにこのスタントは、この後のシリーズにおけるスタントの新しい基準となっていったのである。

脚本の粗を隠すほど
スリリングなスタント

『ゴースト・プロトコル』以降のM:Iシリーズは勿論のこと、この年2011年以降のクルーズ作品はほぼすべて、クルーズの生スタントを見せることが作品一番の売りになっていく。

『ゴースト・プロトコル』の大ヒットで息を吹き返したM:Iは、他の作品とは一線を画すフランチャイズとなる。

 この新たな展開は、ポーラ・ワグナーとたもとを分かち、クリストファー・マッカリーと創造作業をするようになったトム・クルーズが、自分の信用できるスタッフを固定で集めて指揮を執ることで可能になっているものだ。

 作品の中心がスタントになったことで、このフランチャイズはストーリー部分での余計な心配をしなくて良くなった。多少無理があっても観客は気にしない。

 ロケ地を選択し、そこで行うスタントを考えて、それに合わせて有能な脚本家であるマッカリーがストーリーを作れば良いのだ。マッカリーはクレジットされてはいないが『ゴースト・プロトコル』の脚本修正にも参加していた。

『ゴースト・プロトコル』には『M:I‐3』で妻を演じたミシェル・モナハンと、1作目から3作目まで出演していたヴィング・レイムズがカメオ出演しているが、これはこの後の続編で2人のキャラクターが復活できるようにするための伏線だったに違いない。