『M:I‐5』として登場した『ローグ・ネイション』ではテック担当だったベンジー(サイモン・ペッグ)を現場に出してアクションをやらせ、レイムズ、ジェレミー・レナー、レベッカ・ファーガソンなど、毎回登場するレギュラー出演者を固定した。
これにより、観客は続編で新たな登場人物を覚えるために頭を悩ませずとも、クルーズのスタントに集中できるようになったのである。
3つの歴史的スタントが詰まった
『ローグ・ネイション』
『ローグ・ネイション』は、『ゴースト・プロトコル』同様、オープニングから観客の心をつかむ演出が用意されていた。それは、トム・クルーズが飛行機の壁面にしがみつく中、そのまま飛行機が空を飛んでいく、というシークエンスだ。
CGを使うのであれば、このシーンは見た事のあるシーンとなるだろう。しかし観客が求めているのは、実際にそれをクルーズ自身がやって見せるスタントである。
ブルジュ・ハリファのスタント同様、何カ月もの訓練と、それを可能にする物理の研究、機材の開発を経て、撮影は決行された。目を保護する為に大きなコンタクトレンズを目につけ、騒音対策の耳栓を耳に入れ、またしてもワイヤー1本で固定されたクルーズが、飛行機の壁面にしがみついて空を飛ぶ。そこでも光の差し方やタイミングを計りつつ、台詞を言うクルーズ。
当然のことながら飛行中の演技指導は出来ないため、クリストファー・マッカリーとクルーズは本番前に綿密な打ち合わせをするが、その際にクルーズは「飛んでいる間、もし自分が苦しそうな顔やパニックを起こしているような様子だったとしても、カメラを止めないでほしい。演技してるだけだから」と言ったらしい。
死の危険のある撮影の後で
クルーズが言ったまさかの一言
命の危険と隣り合わせのこの撮影は、1テイクで終わるものと皆思ったが、1回目の成功をした直後にクルーズは、「もう1回」の合図を送り、結局このテイクは8回行われた。皆が脱帽するクルーズのプロ根性だ。
『トム・クルーズの真髄 40年間トップに立ち続ける理由』(メラニー、星海社新書)
『ローグ・ネイション』には劇中にもうひとつ、こちらが見ていて苦しくなるような長回しの水中撮影シーンがある。このシーンを撮るためにも、空中撮影同様、すべての部署のスペシャリストがそれぞれ担当分野を研究、開発し、撮影を可能にするための準備をして臨んだが、1作品で2つもの規格外スタントを取り入れたのは、『ローグ・ネイション』が初めてだった。
『ローグ・ネイション』にはさらにもうひとつ、モロッコでのバイクチェイスシーンというのがある。水中、空中に比べると、バイクやカーチェイスは見慣れたアクション映画のシーンではあるが、この作品はクルーズがヘルメットなしで(☆★☆★時速 原文ではただの「160キロ」ですが、重さと区別するため、「時速」を加筆したいです。プレビュー時に版元さんに要確認。☆★☆★)160キロのバイクを運転しているのである。
クルーズもインタビューで「最も過小評価されているスタントは?」と訊かれて「バイクチェイスのシーン」と答えている通り、その迫力は吹き替えでは出せない緊張感で、高危険度スタントの数という意味ではこの作品はシリーズナンバーワンかもしれない。







