◆リスクを抑えてサクッと利益を狙う驚きのカラクリ
ゴールドマン・サックスに入社し、マネージング・ディレクターに就任、アジアのトレーディングチームを率いた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」や「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法、有望な個別株の見つけ方まで、「オルカン」「S&P500」の“次に知るべき”ノウハウが満載!
Photo: Adobe Stock
王道にして堅実:現物と先物の「ズレ」を突く基本構造
伝統的に多く用いられている「指数裁定取引」では、例えば日経平均の225銘柄の株式の平均株価と、それに連動して取引されるべき日経平均先物との間に価格の乖離が生じることがあります。
このとき、割高なほうを売り、割安なほうを買うことで、収益を獲得することができます。過去には、別々の取引所における日経平均先物の需給のゆがみを利用した裁定取引も根強い人気がありました。
国境と通貨の壁が生み出す、かつての黄金ルート
米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引される米ドル建ての日経平均先物と、大阪やシンガポールで取引される円建ての日経平均先物は、同じ日経平均先物なのにタームの違い(通貨および損益の定義の違い)から価格差が生じていました。
そのため、この価格のゆがみを利用する裁定取引が長いこと有効だったのです。
【解説】個人投資家が明日から使える「思考のヒント」
プロの世界で行われてきた裁定取引(アービトラージ)の歴史から、個人投資家が明日から使える「思考のヒント」を3つのポイントで解説します。
「同じ価値・違う価格」を見逃さない視点
シカゴと大阪の先物価格差を狙うような伝統的な裁定取引は、現在ではAI(人工知能)や高速通信の進化により瞬時に価格差が埋まってしまうため、個人投資家が直接同じ土俵で戦うのは非常に困難です。
しかし、がっかりする必要はありません。「同じ価値を持つはずなのに、異なる価格がついている歪み」を見つけるという思考プロセス自体は、私たちの投資に強力な武器をもたらしてくれます。
個人投資家が狙える「日常の歪み」とは?
では、個人の環境でこの「歪み」をどう見つければよいのでしょうか。分かりやすい例の一つが、日本企業が海外で取引されている「ADR(米国預託証券)」の動きです。
夜間の米国市場で日本の主力銘柄のADRが大きく動いた場合、翌朝の日本市場の寄り付き(始値)には、その海外での評価が反映されます。この国境を越えたタイムラグによる価格差の傾向を掴めば、翌日のトレード戦略を有利に立てることができます。
また、企業の買収(TOB)が発表された際、買付価格よりも実際の市場価格がわずかに低い水準で推移することがあります。これも「いずれ買付価格にサヤ寄せされる」という確度が高い価格差であり、リスクを抑えて手堅く利益を狙う一種のアプローチと言えます。
「絶対」ではなく「相対」で相場と向き合う
「明日、株価が上がるか下がるか」を単一の銘柄だけで当てるのは至難の業です。しかし、複数の市場や関連する銘柄を「比較」することで、一時的なパニックや需給の乱れによって生じる「不合理な価格差」が見えてきます。
プロが行っていた高度な取引も、根本にあるのは「割安なものを買い、割高なものを売る」というシンプルな原則です。市場の熱狂に流されず、常に「相対的な価値のズレ」を冷静に探す視点を持つことこそが、リスクを抑えながら着実に資産を増やすための大きな一歩となるのです。
※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。











